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君と導く解式_fkr ページ3


「ここ展開して、…」

『…あ!この形見たことある!』

「そう、合ってる。これであの公式を代入して…」


分かった分かった!と嬉しそうに言いながらスラスラとルーズリーフに式を書いていく、彼女の字は少し癖があった。勿論汚いわけじゃないけど、見本になるような綺麗な字ではない感じ。
"6"と"b"を間違えてしまったことから、彼女は数式に出てくるアルファベットは全て筆記体で書いていた。今度は"9"と"a"を間違えそう、と嘆いていたけれど、それはもうどうしようもないね、と笑った。

彼女とお揃いにしたくて、俺も筆記体で書くようにしたのは内緒。


彼女は根っからの文系だった。いつしかのテストで赤点ギリギリを記録して、先生から「もう福良に教えて貰え」と言われたそうだった。
俺はというと、根っからの理系だった。テストの点も良く、そのお陰で先生から指名されたんだと思うと、すごく嬉しかった。

でもさすがに、ほとんど話したことのない女子とセットにされたことに対し、最初は意味わからんと思っていた。でも、彼女_そろそろ名前で呼んであげよう_Aはとても魅力的な子だった。健気で、謙虚で、優しかった。


俺が好きになるのも、そんなに時間はかからなかった。


数学が苦手なAに俺が教え、Aは俺に歴史を教えてくれた。なんで数式はあんなに簡単に思いつくのに、人物の名前や年号は覚えられないんだろうか。


『出来た〜!やっぱ拳くんは教え方が上手だね〜』

「Aの吸収が早いからだよ。全然苦労してないもん」

『えへへ、それは嬉しいな』


にこ、というか、にへぇ、って感じで優しく笑う彼女を見てると、自然と口角が上がってしまう。直ぐに、Aは次!と勢いよくページをめくった。


『……なにこれ』

「あー…面倒臭いやつだ」


俺でも少し時間がかかりそうな問題。2人で一緒に考えてみる。


『この公式は使えないの?』

「ダメ。ほら、ここが正の数だから」

『そっか〜…』

「あ、でもこうやって変形させたら」

『…あ!こっちに当てはめられるじゃん!』

「違う違う、これだよ。ここに代入しなきゃ」

『あれ?』


うーんと唸る横顔を眺めながら、彼女には一生数学が苦手でいて欲しいと願った。
俺も、歴史はずっと苦手だから。
教えてくれたお礼に、俺にもずっと教えさせてね。

その笑顔を、俺にずっと見せて、

その視線の先には、_ini→←▽



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作者名:Ruka | 作成日時:2021年5月16日 0時

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