僕だって！＿ymmt ページ13
『山本くんは可愛いねぇ』
僕の彼女は、僕のことを｢可愛い｣と言う。
でも、僕はこれを完全に否定出来ない。いや、自分のことを可愛いと思ってるわけではなくて。彼女が かっこいいから、相対的に見るとどうも僕の方が可愛らしいのか、という錯覚を覚えてしまう。
1つ年上のAさんは、バレー部所属の高身長女子である。勿論、彼氏の贔屓目なしでもみんなかっこいいって言うと思うよ？
……まぁ、誰かが彼女のことをかっこいいって言っても信じないけど。だってきっと、彼女の可愛らしいところは、僕しか知らないから。
勿論僕だってかっこいいと思う。これは事実。でもそれは容姿の話であって、実はうさぎを2匹飼ってるとか、甘党だとか、逆に辛いのは苦手だとか、そういう可愛らしいところが沢山あるから。僕にとって彼女は｢可愛い｣存在なのだ。
でも彼女は、僕のことを｢可愛い｣と言う。
だから僕は、｢かっこいい｣と思ってもらえるように日々奮闘しているのだ。ある日は鞄を持ってあげたり、ある日は駅で先に待っていたり。
それでも彼女は、『頑張ってるの可愛い〜』とか『待っててくれたの？可愛いね』とか、僕がすることほぼぜーんぶに｢可愛い｣と言う。もう、悔しいったらありゃしない。
逆に彼女は『高いの取れない？取ってあげるよ、バレー部舐めないでね？』とか『手繋ぎたいなら言ってくれればいいのに。喜んでするよ？』とか。なんでそんなイケメンな言葉がホイホイ出てくるのか分からない。
｢…ってことがあってさー！もう僕の彼女かっこよすぎるの！！｣
｢はいはい、良かったね〜｣
｢非リアの乾に惚気話どうも〜｣
｢惚気じゃないもん！愚痴だもん！これをまともに聞いてくれるのは渡辺と乾しかいないの！！｣
｢これでもまともに聞いてると思ってるの？？｣
｢俺らにとってはそういう愚痴も充分惚気なんだわ｣
｢2人とも酷い！！！｣
｢｢こっちのセリフだよ！｣｣
後ろの渡辺の机に突っ伏して嘆く。机を僕に占領された本人は呆れながら息を吐いた。遠くの席から遊びに来た乾も苦笑いしてるのが分かる。
｢かっこいいって言わせたいの！！｣
｢もう山本が頑張るしかない｣
｢はい。非リアの乾も応援してますよ｣
｢2人とも棒読みじゃん！もう！！｣
かくして(？)、僕の｢かっこいいと思わせる大作戦｣が幕を開けたのだった。
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作者名：Ruka | 作成日時：2021年5月16日 0時
