ダレカノ。_Junta.N

魔法みたい。 ページ28

.









.









.



平日の夜中というのもあり、人はいない。


と言っても、彼女が今日店にいるかもわからずに来たから彼女と話ができるかと言えばそうではないけれど





.









.









.


「…あ、」








だけど、









「こんばんは、お久しぶりです」








ずっと見たかった彼女は、少し眠そうな目をしてそこに居て。

俺を見て少し目を開いてる。







「…お久しぶり、です」









どっちがお客なのかわからないようなやり取りになってしまう。







「えっと…お好きな席へどうぞ」







じゃあここで、と言って彼女の目の前に座ると、困ったように眉を下げる






…苦しいな、こんな、困らせんの





.









.









.






「ツアーで忙しいんですよね」








意外にも、初めに口を開いたのは彼女








「今月は公演ないの、練習とかはあるけどなあ」








「…やっぱりアイドルですね、住む世界が違うというか。わたしみたいな一般人には公演も練習もないですし」






彼女の、距離を感じる言葉に、胸がつまる



今だけは、アイドルとして見ないでほしい。





.









.









.





「…バレンタインは、彼氏と過ごしたの？」







彼女に合わせて標準語で言葉をかけてみる







「…関西弁でいいのに」







ふわりと笑う彼女

笑顔を見せてくれたのは、いつぶりだろうか。

悩んで、考えて、胸に溜まっていたものが、それだけで綺麗に溶けて消えていく。







「あ、ご注文は？」








俺の問には答えてくれへんかったけど、笑顔が見れたからそれでええ。



いつの間に、つれない彼女に惹かれてた自分に、ここではっきりと気付いた。

これだけ→←謎だらけ。

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す