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「頭、特別に乾かしてあげる」

キョロキョロと、挙動不振な私に
紫耀さんは優しく言葉をかける。

言い返す言葉もないまま、
紫耀さんが座っている前に座る。

「髪、綺麗に伸ばしてるなあ」

彼の指が、髪の毛に絡んで
心臓がいちいちうるさい。

『紫耀さん…』

「いいよ」

『え…』

「気になる事。
なんでも聞いていいよ」

『…なんでも?』

「うん、なんでも。
Aは大切な人やから、知っててほしい」

ドライヤーの音が邪魔だ。
紫耀さんの声、いっぱいに聞きたいのに。

『えっと……、』

「はは、聞きにくいか!」

『まあ、……』

髪を乾かす手が優しくて嬉しくなる反面、
次に言われる言葉を想像すれば心臓が痛くなる。

「初めて結婚したいなあって思った人」

『……っ、』

「ずっと隣にいたいなって思ってた」

『……』

「でも、無理してたんかなあ」

髪が乾き、ドライヤーが止まる。

すると、紫耀さんが自分の隣を
ぽんぽんと叩いた。

「隣、来て?」

頷いて、大人しく隣に座ると
紫耀さんは笑ってくれた。

「19の時、俺の親父が死んだ。」

『え……?』

「ざまあみろって思った」

『……』

「でも、あいつには話せへんかったなあ」

ふにっと、私のほっぺを摘んだ。

「繋ぎ止めたくて嘘ついたり、
完璧に見られたくて弱さを見せれんかったり」

『……』

「結局、全部作ってた。
月みたいな人でさあ、消さないように必死に縋ってたんかなあ」

紫耀さんが悲しい顔をしたから、
なんだか私まで悲しくなった。

「Aが、好き。」

『…しょ、うさん』

「大切。」

ぎゅうっと、腕を回され、
私の体がすっぽりと埋まる。

私も腕を回し返した。

心臓の音が聞こえてしまわないか不安だ。

紫耀さんはこんなに落ち着いているのに、
私だけ緊張していて恥ずかしい。

「言って。好きって、」

私は、紫耀さんが好きだから。
どんな紫耀さんでも好きだから。

紫耀さんにとって、私は
飾らずそのままで、安心できる人でありたいな

『大好きです』

神に誓えるよ。
心から、紫耀さんの事が大好きだと。

その意を込めて、
回した腕にぎゅうっと力を込めた。





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林檎(プロフ) - はじめまして!最初にこの作品を見つけて呼んだ時は月光インセストを読んでいない状態でしたが、月光インセストを読んでからこちらを見るとより一層切なくて面白かったです!本当に大好きです!更新無理のない程度にお待ちしております!! (2020年11月3日 15時) (レス) id: 96ebd3d640 (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - 月光インセストもこの作品もすごく好きです!主人公はどんな人なんだろうって、きっとすごく魅了的なんだろうなと思うし、主人公以外を女だと思ってないって言い切れちゃう廉くんもめちゃくちゃカッコいいって思いました!紫耀くんにも幸せになってほしいです (2019年8月17日 21時) (レス) id: cc08c80ce0 (このIDを非表示/違反報告)
みにれお(プロフ) - 続きがすごく気になります!ぜひ更新してください!!! (2019年8月13日 17時) (レス) id: 17710468a0 (このIDを非表示/違反報告)
詩織(プロフ) - 続きが気になります!更新お願いします!m(_ _)m (2019年1月12日 0時) (レス) id: 2bc913fedf (このIDを非表示/違反報告)
Mt.Wind Bell(プロフ) - 更新楽しみに待ってます( ´ ` ) (2018年12月15日 8時) (レス) id: 4eba5a31cc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:C-N | 作成日時:2017年2月5日 1時

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