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「せやで。一条A」

私が答えるより先に、
なんて事ないような顔をした永瀬さんが答える。

「……そっか、」

ただ一人。
深刻そうな表情をする神宮寺さん。

その顔をじっと見ていると、
ふいにこちらを向いた彼と視線がぶつかる。

「抜ける?」

きっと永瀬さんには聞こえなかっただろう。
それほど小さな声で神宮寺さんが呟いた。

『…え?』

「俺が連れ出してあげようか」

彼の言い出した事に驚き
しばらくそのまま見つめ合う。

「着いたでー」

永瀬さんのその声で、
我に返った私は曖昧に微笑んだ。


車から降りると、一軒の家の前。

『……わあ、綺麗!』

永瀬さんの家は都心部から少し離れた場所にあり、
何方かと言えば自然の多い田舎のような所だ。

ビルやマンションに邪魔されない場所。
東京にも、こんな場所があったんだ

空に浮かぶ星を見て、
普段自分が生きている世界がどれほど窮屈なものなのか思い知る。

「ジン、先に中入っといてください」

車から降りた永瀬さんが、
神宮寺さんにそう声をかけ、私の隣に並んだ。

「月が見えたらもっと綺麗やねんけど……今日は新月やな」

そして、ゆっくりと空を見上げた。

『月って、淋しいですよね』


'' 今日は満月でも、すぐ欠けてくで ''

'' それで遂には見えなくなる ''


彼の切なげな目が、忘れられない。
紫耀さんがもう月は見るなと言った。

「そう?俺は好きやけどなー」

『だって、満ちたり欠けたり。
コロコロ変わるじゃないですか』

月みたいな人だった。
だから、消さないように必死に縋ってた。
紫耀さんはそう言っていた。

だからなんとなく、否定したくなった。

「なあ、ふわこ。
ちょっと向こうに丘があるの見えるか?」

『丘……あ、見えました』

「Aとあそこで、一生の愛を誓い合った」

『え?』

一生の愛。
永瀬さんが言うだけで、映画の台詞のように聞こえる。

「一応、結婚式のつもりで」

『……』

「本間は超盛大に、やってやりたかってんけど」

『…出来なかったんですか?』

永瀬さんを見上げると、
遠くを見つめ、うん と頷いた。

「今からすごい事言っていい?」

『…っ、なんですか?』

珍しく、真面目な声。

永瀬さんがごくりと息を飲んだのが分かる。



「Aと俺、双子なんよ」


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林檎(プロフ) - はじめまして!最初にこの作品を見つけて呼んだ時は月光インセストを読んでいない状態でしたが、月光インセストを読んでからこちらを見るとより一層切なくて面白かったです!本当に大好きです!更新無理のない程度にお待ちしております!! (2020年11月3日 15時) (レス) id: 96ebd3d640 (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - 月光インセストもこの作品もすごく好きです!主人公はどんな人なんだろうって、きっとすごく魅了的なんだろうなと思うし、主人公以外を女だと思ってないって言い切れちゃう廉くんもめちゃくちゃカッコいいって思いました!紫耀くんにも幸せになってほしいです (2019年8月17日 21時) (レス) id: cc08c80ce0 (このIDを非表示/違反報告)
みにれお(プロフ) - 続きがすごく気になります!ぜひ更新してください!!! (2019年8月13日 17時) (レス) id: 17710468a0 (このIDを非表示/違反報告)
詩織(プロフ) - 続きが気になります!更新お願いします!m(_ _)m (2019年1月12日 0時) (レス) id: 2bc913fedf (このIDを非表示/違反報告)
Mt.Wind Bell(プロフ) - 更新楽しみに待ってます( ´ ` ) (2018年12月15日 8時) (レス) id: 4eba5a31cc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:C-N | 作成日時:2017年2月5日 1時

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