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鬼の音・漆 ページ8

鬼の女の子は、私に笑顔を向けて、立っている。
立っているだけだ。

どうすればいいの?ひいじいちゃんの言っていた日輪刀もない。
日を浴びさせる?日が昇るまであと一時間はある。



「何も」



口角の上がった口が開いて、
少し尖った歯が見えた。



『…え?』



思わず聞き返すと、また言葉を繋げる。



「何もしなくていいよ。

もうすぐ終わるから…」



そう言って満面の笑みを浮かべる。

いや何が?何が終わるの?私?

私の命?私の蚊取り線香の様な人生が?

やだよ!!?



「ふふ、私ね、今日で鬼をやめるの」



『へ!?』



鬼をやめる!?え、そんな「会社やめるの」
みたいなノリでやめれんの!?

そこんとこひいじいちゃんに聞いてないよ!!

帰ったらひいじいちゃんの話覚えてる事全部メモしよう!!絶対必要だわ!!



『お、鬼ってやめれるの…?』



「まあ…純粋なのね!
鬼をやめる、所謂、自決ってヤツ?」



ジケツ…?ジケツ…自 殺ぅ!?



『なんで!?なんで自 殺すんの!?
鬼は何年でも生きれるんでしょ!?』



あれ、なんで私止めてんの?

鬼は死んでくれてありがたいと思う…

なんで、こんな小さな子が鬼なんかに…

目の前の彼女は目を見開いて小さく口を開けた。



「驚いた…
鬼である私に向けての言葉だよね?

私は鬼だよ、何人も食べた。
気付いたら、食べてたの

食べたくないのにいつもいつも、
気付いたらそこは血の海で

怯えきった目が私を見ていた。

もう、いいかなって」



切ない、彼女の表情はその一言だった。

朝日が昇るのに、もう30分もない。



『…なんで君は、鬼になっちゃったの?』



そう聞くと、ゆっくりと顔を歪めた。

引きつった口角が牙を見せる。



「……アイツよ、あのヤブ医者よ!!

アイツが私に、大昔の薬なんて出すから!!
私はこうなってしまったの!!!

なんで…なんで私ばかりこんな目にあうの…」



いきなり吐き出す様に叫んだ彼女は、

どう見ても被害者だった。

追い詰められてる、

ずっと笑顔だったのに、今では憤怒の表情

ずっと苦労してきたんだ。

私は、ただ平凡に暮らして、面白くないと、
つまらないとさえ思っていた。

彼女にしたら、その平凡な暮らしが何よりも欲しかったのかもしれない。

彼女がもし人間だったなら、どんな女性になっていただろう

女の子なのに…
目の前にいるのに、私は何も言えない。



『…あ』



朝日が昇る



「…」



涙を流して笑ってた

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いくら - あ、すき…(素敵な小説ですね!更新楽しみにしてます!) (2020年5月8日 10時) (レス) id: 16c4d9d785 (このIDを非表示/違反報告)
弥生夏(プロフ) - (=゚ω゚=)にゃあさん» ありがとうございます。応援を糧に頑張っていきます。最近スランプでかけていないですけれども、頑張ります。 (2020年4月19日 20時) (レス) id: 2f1398aac7 (このIDを非表示/違反報告)
(=゚ω゚=)にゃあ(プロフ) - 凄く面白くて更新楽しみにしてます!がんばってください! (2020年4月19日 19時) (レス) id: 91777e8ddd (このIDを非表示/違反報告)
弥生夏(プロフ) - 葉月さん» ありがとうございます!!頑張ります!、 (2020年4月12日 14時) (レス) id: 2f1398aac7 (このIDを非表示/違反報告)
葉月 - 面白いです!更新頑張って下さい! (2020年4月12日 14時) (レス) id: 49b2bcdaf0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:弥生夏 x他1人 | 作成日時:2019年12月26日 23時

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