滑稽ないのち【ヒロアカ】 (ページ24)

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23話ページ24

【Noside】

「あぁ…あぁ…ぁ…」

「どうして、どうしてこの子を……」

赤く膨らんだ腹を抱え、女性は雨に打たれ咽び泣く。
腹から流れる血もナイフに滴る血も、等しく雨水に流されていく。

「どうしてよ…まだ、この子の顔も…見ていないのに……」

「返して、返して…私の子を返してよ…！」

傷の痛みや雨の冷たさより、女性はただ目の前の絶望に涙を流した。

何度も何度も腹の子に呼びかけ、何度も何度も目の前の少女に怒りをぶつける。

「…よくやったな、やっぱりお前は使える奴だ。」

「殺さなきゃ殺される。奪わなきゃ奪われる。それがこの世の真理だ。」

後ろから現れた中年の男は少女の薄い肩を掴んだ。
筋肉質な腕は太い指に体重をかけ、ずしりと少女にのしかかる。

「お前は優秀だ、そこらの有象無象とは違い価値がある。……あぁでもな。」

「お前が殺した奴は、お前を赦さないし忘れない。だからお前もゆめゆめ忘れるなよ。」

「それがお前にできる唯一人間らしい事だ。」

「……ま、なんだ、これからも期待してるぜ。」

＿まだまだ雨は止まない。

その中で、引きずり連れ去られる女性は、腹の子の代わりに泣き続ける。

その声はまるで、シミのように少女の脳裏にこびり付いた。

――――――――――

『……』

『私は、きっと間違ってない』