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…カチャリ
頭の中で反響した鍵の開く音に、意識が浮上する。
重い瞼を2、3回瞬きをしながらこじ開ければ、「怖い人達」の女性の顔が視界に映り、途端に身体が震え出す。目の前の女性から逃げようとも、手足はロープで縛られていた。
少年の思考を、一瞬で畏怖が占めた。
たす、けて___!
思わず叫んだ声、…いや、叫ぼうとした声は、音になることはなく、喉の奥で消えた。
何度も声を出そうと挑戦するも、何一つ音へと変わることはなかった。
なんで?なんで僕の声はでないの…?
戸惑い、パニック寸前にもなる少年の様子を見るなり、女性は高らかに嗤う。
「助けを呼ぼうとしたって無駄よ、私がぼくの声を塞いでいるんだもの」
訳が分からないと少年が女性の瞳を見詰めると、女性は問うた。
「ねえ、魔女って知ってる?知らないか、可哀想。
人生経験のひとつとして、お姉さんが教えてあげる。
この世界には、普通の人間と、魔女が存在するの。魔女って言うのはね、私の様な鍵穴を持つ人間のことを指すの。
こんな風に」
そう言うと、女性は左腕の袖を捲り、肘を見せた。
そこにはまるで本当に穴が空いているかの様な漆黒の、小さな鍵穴の痕があった。
その痕を見た少年の瞳は、大きく揺らいだ。
「ぼくの顔のそれも、一緒」
そう、その鍵穴の痕は、少年の左頬にも小さくあったのだ。
「その鍵穴が、魔女の証。普通の人間と違って、力を持つ人である証明なの。
そして私達は、ぼくの様な魔女の子供を捕まえて、他の魔女へと売り捌く、“ 魔女の子狩り ”よ。覚えおきなさい?
…覚えたところで、ぼくの人生は終わった様なものだけれど」
その声に周りを見渡した少年は、連れ去られたのが自分だけではないことに、初めて気が付いた。
広く、薄暗いコンテナハウスの中に、少年と同じ様に手足を縛られ、ロープを解こうと足掻く子がいれば、泣いている子も、目の前にいる人を睨み付けている子もいた。
皆、この知らない怖い人達によって、更に知らない人達へと、知らない所へと、連れて行かれるのだろうか。
朝、ママが何かを言っていた気がする。
『大丈夫、あのお兄さん達が、守ってくれるから。
迎えに行くまで、待っててね』
あれ、さくまさんに読んで貰ったお話の、お母さんみたいだ。
僕も、仲良しの兄妹のみたいに、捨てられた…?
ヤダ、まま、ぼくヤダ…!ヤダよ……!
「すて、ないで……っ」
「大丈夫、迎えに来たよ」
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作者名:Ju | 作成日時:2020年11月28日 8時