薬屋は傾国美女でした。六巻 (ページ35)

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285話ページ35

一度、帝の許可を得てからと言う話だが、皇太后が話をすれば許可は下りるだろう。

　立ち会いは壬氏(ジンシ)たちが行くと言うことで、いつの間にか話が通っていた。

　きっと水蓮(スイレン)が根回ししてくれたのだろう。

　
A「(翡翠宮(ひすいきゅう)に戻ったら、紅娘(ホンニャン)さま怖いだろうな。むしろ今まで甘かったのかも、、)」

　紅娘(ホンニャン)は侍女頭として玉葉妃(ギョクヨウひ)を守る責務がある。

　Aのようなどっちつかずの者が、いろんな場所を行き来していれば好ましくないはずだ。

　Aも正直どっちに付けば良いのかと思う。

　そのため、正式には壬氏(ジンシ)の侍女なので、きっと壬氏(ジンシ)の侍女だと思っている。

　今回は急だったので、水蓮(スイレン)の部屋にとめてもらうことになった。

水蓮(スイレン)「何か読みたいなら、奥の部屋から探してきて良いわよ。」

　暇つぶしの読書。

　本は貴重でなかなか読めるものではない。

　Aはたくさん読んでやると意気込んで奥の部屋に入る。

A「、、？」

　本を探そうとすると、置いてある小さな行李(こうり)が目についた。

　古びでいるが、縁には刺繍(ししゅう)がされていて、柿渋が塗ってある。

水蓮(スイレン)「それはね、、」

　水蓮(スイレン)は行李(こうり)を卓上(テーブル)の上にのせ、中身を見せてくれた。

水蓮(スイレン)「壬氏(ジンシ)さまのお気に入りたちよ。他の玩具(おもちゃ)があっても、気に入ったものばかりで遊んでいたの。」

　水蓮(スイレン)は懐かしそうに木彫りの人形をつまむ。

　繊細な細工が施されたそれは、手垢(てあか)がついていて黒ずんでいた。

　汚れを知らぬ手で触れこうなるということは、かなりずっと遊んでいたのであろう。

　懐かしそうだが、少し寂しそうに微笑む水蓮(スイレン)。

水蓮(スイレン)「Aは壬氏(ジンシ)さまをどう思う？」

A「良い方だとは、、(珍しい薬草くれるし)」