薬屋は傾国美女でした。六巻 (ページ34)

今日:29 hit、昨日:185 hit、合計:361,845 hit

284話ページ34

A「(、、で、、一体何が呪なのか、、)」

侍女「呪いなんて無いと私は言いました。」

　神妙な面持ちで侍女は言う。

　しかし、皇太后は自分が呪ったと思っているらしい。

　毎夜、いなくなれば良いと思っていたからだそうだ。

A「、、何か呪いがかかったと思った原因はわかりますか？」

　侍女は一瞬顔を曇(くも)らせた。

　と言うことはあるのであろう。

侍女「魂抜けされた帝の御神体は、一年間、霊廟(れいびょう)にて安置されます。」

　何かの間違いで蘇(よみがえ)ることもある。

　曼荼羅華(まんだらけ)が良い例だ。

　また、亡くなる前に墓が完成しなかったという理由もある。

　時間を置けば、急いで作らずにすむからだ。

侍女「翌年、主上と安氏(アンシ)様は先帝を埋葬するため、御神体を迎えたのですが、、」

　その遺体は虫に食われず、干からびず、死んだときとほぼ変わらない状態だったらしい。

A「腐らなかったのですね？」

侍女「霊廟(れいびょう)は夏場も涼しい場所ですが、それを考慮(こうりょ)しても、、」

　氷漬けになっているならともかく、常温での保存であれば虫に食われ腐敗し、干からびるはず。

侍女「主上も不思議な顔をされていました。良くできた人形とすり替えられているのかと思ったようです。でも、紛(まぎ)れもなく先帝だったと。同じく先の皇太后さまを迎えに行った際は、あまり口に出したくない姿で、でもそれが普通だと。もうすぐ、あの棟は取り壊されます。それまでに調べてもらいたいのです。」

　先帝が身罷(みまか)られて六年。

　遠い墓場に遺体は安置され、思い出される場所はあの棟くらいだろう。

　謎(なぞ)が解けないままその棟が壊されてしまえば、皇太后はずっともやもやしてしまうはずだ。

A「あの部屋に入ることはできますでしょうか？」

侍女「それは、、分かりました。聞いてみます。」

　その日Aは翡翠宮(ひすいきゅう)に帰らず、壬氏(ジンシ)の元に向かった。

　翌日、もう一度あの部屋に行く為に。