薬屋は傾国美女でした。六巻 (ページ26)

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276話ページ26

帝「だそうだ」

　しかし、Aにだって言いにくいことはある。

　それをどううまく言おうか考えつつ、口を開いた。

A「、、ご説明いたしますと、ある種のかたがたは、どちらが赤か緑か判別が困難な方もいらっしゃるということです。」

壬氏(ジンシ)「判別できない？」

　壬氏(ジンシ)は首を傾げる。
　帝も首を傾げている。

　雰囲気(ふんいき)は似てないが、妙にそんな行動が似ている。

A「ええ。ですので、最初に確実に赤ではないほうを選びました。次の扉も同じです。赤と黒で見分けにくいとき、白い扉を選ぶでしょう。」

壬氏(ジンシ)「つまり、どういうことだ？」

　壬氏(ジンシ)がはっきりと分からないという顔でたずねてくる。

A「この廟(びょう)に選ばれし者、すなわち王母の子である証拠は、色を識別することが困難であることです。」

　もちろん、全ての色が識別困難と言うわけではない。

　個体差もある。

　そのため廟(びょう)の選択を誤(あやま)る者もいるであろう。

　選定に漏(も)れた者、偶然(ぐうぜん)に選び出された者もいたはずだ。

　しかし、その後に新たな血を入れもとに戻せば良い。

　妃がこの廟(びょう)に入れたのもきっとそう。

A「また、色が識別困難な方は夜目(よめ)が利(き)くそうです。」

　

　これはAが白鈴(パイリン)の禿(かむろ)時代、色が識別困難な客から直接聞いた話だ。

　そして、日常に困難な性質を持っていながら今もこうしてあるということは、他に優れた性質を受け継いでいる可能性もある。

A「建国物語では、王母は暗闇でも遠くを見渡せる目を持っていたそうですね。」

　王母は遠き地からやってきた。

　暮らし慣れていない移住者で、色が識別困難であれば暮らしていくには大変であろう。

　そこで考えられるのは婚姻だ。

　物語では王母に夫はいない。

　