薬屋は傾国美女でした。六巻 (ページ3)

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253話ページ3

A「、、いくらでも踊(おど)りますよ。」

　Aは壬氏(ジンシ)の大きな背に頭を預ける。

壬氏(ジンシ)「く、、薬屋？」

　あからさまに動揺(どうよう)している壬氏(ジンシ)。

　Aは気にせずに話す。

A「、、今日初めて、、金の為じゃなく、、ただ一人殿方(とのがた)を思って、、その方の為に舞(ま)ういました。」

　Aはそう言いながらも壬氏(ジンシ)の背中に張り付き、頰(ほほ)をこすりつける。

壬氏(ジンシ)「それは、、どういう」

A「私は、、幸せです」

　壬氏(ジンシ)の背中に重みがくる。

壬氏(ジンシ)「何故いつも肝心なところで寝る！」

　壬氏(ジンシ)はそのままうなだれ、ため息をついた。

　吐き出しそうなほど甘い雰囲気(ふんいき)の中、猫猫(マオマオ)は言った。

猫猫(マオマオ)「前途多難(ぜんとたなん)ですね」

壬氏(ジンシ)「おもしろがるな！」

　からかわれる壬氏(ジンシ)であった。

　✱

　ある日の夕刻。

　早めの夕餉(ゆうげ)を取っていたときのことだった。

愛藍(アイラン)「ちょっとだるいかもしれない」

　卓上(テーブル)に顎(あご)を乗せ、ほとんど開いてない目でそういった。

　猫猫(マオマオ)はその額(ひたい)に手を当てると、微熱(びねつ)があるようだ。

桜花(インファ)「風邪(かぜ)とかやめてよ〜？玉葉(ギョクヨウ)さまにうつったらどうする気よ」

　甘い菓子を食べながらそういう桜花(インファ)。

愛藍(アイラン)「気を付けてたんだけど、、」

　むっとした顔でそういう藍愛(アイラン)。

　風邪(かぜ)というものは厄介(やっかい)で、どれだけ気を付けていても引くときは引くのだ。

　Aと猫猫(マオマオ)は風邪(かぜ)薬を煎(せん)じようと部屋に戻ろうとすると、桜花(インファ)に引き止められた。