薬屋は傾国美女でした。六巻 (ページ18)

今日:92 hit、昨日:185 hit、合計:361,908 hit

268話ページ18

猫猫(マオマオ)「それって、羅門(ルオメン)という医官ではないでしょうか？」

老師(せんせい)「知っているのかい？」

　老宦官は目を丸くする。

　おやじである羅生(ルオメン)は常識人であるようで、そうではない。

　常識があるなら、後宮の中にいろんな薬草を植えまくったりしないだろう。

猫猫(マオマオ)「(思わず言ってしまった)」

　一応、罪人として追い出された男なので、口に出すのはまずかったかもしれない。

　しかし、老宦官を見るに羅門(ルオメン)に対する嫌悪感らしきものはなかった。

　正直に身内であることと、薬屋で細々と生計を立てていることだけを伝えた。

　老宦官は感慨(かんがい)深そうに猫猫(マオマオ)を見る。

　小欄(シャオラン)は、へたくそなりに書いた字をしっかり見ている。

老師(せんせい)「そうかい。羅門がねえ」

　しみじみと言う老宦官は、養父と仲がよかったのだろうか。

　それを聞きたいという好奇心に駆(か)られながらも、薬師二人はそろそろ戻る時間だと気が付いた。

　へたくそな字を書いた紙を大切に折りたたんで懐(ふところ)に入れる小蘭(シャオラン)とともに、手習所をあとにした。

　その二日後、皇帝が翡翠宮(ひすいきゅう)にやってこられた。

　今回の毒味当番はAだ。

　いつも通り毒見をし、退室して終わりのはずが呼び止められた。

　A「なにかご用でしょうか」

　帝がAを呼び止める用があるとすれば、絵巻物の教本のことだろうか。

　残念ながら、検閲(けんえつ)を通してしか配ることができなくなったので、今は簡単に主上に流すことはできない。

　それは、壬氏(ジンシ)が直接、帝に伝えたはずなのだが。

帝「今から、選択の廟に入ろうと思う。ともについてまいれ」

A「(は？)」

　思わず口に出そうになり、手のひらで押さえ込んだ。

　一体、どういうことだろうか。