薬屋は傾国美女でした。六巻 (ページ14)

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264話ページ14

壬氏(ジンシ)が主体となってやっている後宮内の手習所だった。

　本当ならなんとか塾(じゅく)と偉(えら)そうに看板でも掲げたいところだろうが、そう大事にすると面倒くさいとAと猫猫(マオマオ)が以前言っていたのでこのように質素にやっている。

　北にある建物のうち、比較的、傷みが少ない棟(むね)を改築したらしい。

　先日、異国の特使(とくし)が来た際に、この棟を利用することがあったため、かなり綺麗(きれい)になっていた。

　生徒の中には、小蘭(シャオラン)がいた。眠そうな眼(まなこ)を擦(こす)りながら、教本と老師を交互に見ている。

　今のところ、日常的な言葉はだいぶ覚えたようで、今は簡単な物語を読む段階に移っている。

　先ほど老師が読んでいたのは、この国の建国の物語であり、誰もが一度は聞いたことのある昔話だ。

　Aと猫猫(マオマオ)は今さらそんなものを習う気はなかったが、様子を見に行くかという壬氏(ジンシ)の誘(さそ)いにのせられてここに来ていた。

　興味(きょうみ)がないと言ったら嘘(うそ)になる。

　小蘭(シャオラン)や知っている女官たちもちらほらいる。

　なにより壬氏(ジンシ)の目論見が成功したら、今後、後宮のありようも変わってくるだろう。

高順(ガオシュン)「壬氏(ジンシ)さま、お時間です。」

　忙(いそ)しい宦官は、お付の官にそう言われるとしぶしぶのぞき見をやめた。

　もう少しどんなものか眺(なが)めていたいのだろうが、ほかにもやる仕事はある。

壬氏(ジンシ)「お前たちはどうする？」

猫猫(マオマオ)「私はもう少し見ていてもよろしいでしょうか？」

A「私も少し、、」

壬氏(ジンシ)「気になったところがあったら、あとで報告してくれ」

　猫猫(マオマオ)とAはゆっくり頭を下げた。

　授業が終わると、宦官たちが現れて、焼き菓子が生徒たちに配られた。生徒はそれぞれ目をきらきらさせている。

　猫猫(マオマオ)とAはその中にいる小蘭(シャオラン)のもとへと向かった。