薬屋は傾国美女でした。六巻 (ページ1)

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251話ページ1

ゆっくりと酒を飲(の)むふりをして、Aは舞(まい)始める。

　裳(スカート)が舞(まい)う。

　羽衣は美しい曲線をえがき、視線(しせん)を集める。

　頰は桃色に染まり、うっとりとしたAに皆が見惚(みと)れる。

　ニ胡(にこ)や琴(こと)、太鼓(たいこ)は全てただ一人の女の為に演奏されている。

　この世のすべてはこの女の為にある。

　そう思わせるのは花街の正一品。

　Aである。

　演奏が終わと、Aはゆっくりとお辞儀(じぎ)する。

A「、、(誰かの為に踊(おどる)のは、初めてだなぁ、、)」

　身体の火照(ほて)りがおさまらないが、気分は良い。

　このまま眠(ねむ)りたい気持ちがでてくる。

壬氏(ジンシ)「ご満足頂けたでしょうか。」

　いつの間にか後ろから現れた壬氏(ジンシ)。

　心なしか濡(ぬ)れている。

　天女の微笑みで挨拶(あいさつ)する壬氏(ジンシ)をみて、特使(とくし)たちは少々顔を歪(ゆが)ませた。

アイラ「ええ、大変楽しめまシタ」

　なんとか平常心を保っているのであろう。
　特使(とくし)は作った笑顔で微笑んでいる。

帝「実に見事であった。やはり、最初に頂(いただ)くべきであったか。」

A「恐悦(きょうえつ)至極(しごく)に存じます。(何をだ、、考えたくもない。)」

　少し残念そうな顔をする帝。

　Aに手をだしておくべきだったとでも言いたいのであろう。

壬氏(ジンシ)「それでは、お花見をお楽しみくださいませ。私共はこれで失礼いたします。」

　
　そう言ってお辞儀(じぎ)すると、壬氏(ジンシ)はAの手を引き連れ帰る。

　帰るAを見て、周りのものは名残惜(なごりお)しそうにしているがそんなの知ったこっちゃない。

　ひと目のつかない場所まで行くと、ようやく壬氏(ジンシ)は口を開いた。

壬氏(ジンシ)「高順(ガオシュン)から聞いたが、酒に酔(よ)わされたのか。」

　口が尖(とが)っている壬氏(ジンシ)だが、酒など飲(の)んでいないはずなのに頰(ほほ)が桃色に染まっている。