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「おはよ、A」
目が覚めると、真横には清々しい笑顔を見せるフジくん
ああ、朝日が眩しい
ご丁寧に着せられた下着を見て、珍しく私が先に堕ちたんだなと
足の先まで掛けられた布団を退かして起き上がろうとする
それを阻止した彼の手に、されるがまま
枕の柔らかさに沈む頭はもう起こせなくて、ただ横目でフジくんの目を見るしかなかった
「、なに」
「おはよ、って」
「…はいはい、おはよ」
挨拶を返さなかった事にムッとしたらしい
子供か、と突っ込みたくもなるが抑えよう
フフ、と満足気に笑う顔を横目に今度こそ起き上がる
朝の八時前
チェックアウトは十時
もう少し、ゆっくりしてから______
「ねぇA」
「なあに」
「お風呂、一緒入ろうよ」
ああ、そう言えば昨日寝落ちしてるから
まあ、いいか、時間あるし
「いいよ、洗ったげる」
「ううん、今日は俺が洗う」
「え、」
爽やかに、にこやかに
珍しい
いつもは甘えたなのに
「どうしたの急に」
「…いや、その」
目を泳がせて、口元をキュッと絞る
何かを隠している時の彼の癖
手元もウロウロとして、余計に怪しい
何かあるぞこれは
「フジくん」
「…メール」
メール？
私の携帯をそっと差し出す
何故持っているんだ
「メールがどうしたの？」
「ごめ、ちょっとだけ見ちゃって」
段々俯き出すフジくんから目を逸らさぬように考える
メール、見た、それだけ
ちょっと…いや、まあ、別に疚しい物なんて無い筈だが
「あの、キヨが」
「え？」
電源を付けて遮ってみると、キヨくんからの通知が何件かポツポツとある
内容といえど、短文短文で区切られているだけ
『着いたか？』とか『頼むぞ』とか
他愛もない、ただの社交的な内容
「これが、どうしたの」
「…キヨの所、行ったんだな、って」
「…」
ああ、なるほど
「フジくん、キヨくんからの連絡無視してるんだってね」
「うっ、」
これか、誤魔化そうとしてるんだな
「…はあ、そんな警戒しなくてもいいよ」
「え？」
「私と居るんなら大丈夫かって感じだったし」
いやまあ最初こそ睨まれたんですけど
「本当に、？」
「うん」
そう言うと、安堵したかのように顔が明るくなる
だがしかし、何故無視するのかは問いただそう
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作者名：じーにゃ | 作成日時：2018年4月15日 22時
