ただ、縋られたいだけ。【fj】 (ページ13)

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カタカタと、キーボードの音が聞こえる

静かにリビングの扉を開けると、黒髪に寝癖が付いたままの彼

肩に毛布を掛けてパソコンを弄っている

「フジくん」

「あっ、A」

おかえり、と笑顔を向けられて

ただいま、と薄く微笑む

「寒い？」

「んー」

曖昧に返すという事は寒いという訳だ

何故暖房を付けないのか

また、これも遠慮なのか

「フジくん、ほら」

「え？」

「おいで」

ソファに腰掛けて、腕を広げた

キョトンとした顔で私を見る

もう一度、おいで、と

顔を緊張したように強ばらせて立ち上がる

小さく、ゆっくり、近付いてくる

遠慮がちに腕を広げて来たのを引っ張る

「う、わっ」

私に重みをかけまいと上手くバランスを取る彼

ソファの後は壁

その壁に手を着くフジくん

首に腕を回す私

顔が、近い

「A、その、」

「隈、取れてないよ」

「へ、」

唇にそっと口付ける

柔らかい感覚と、ひんやりとした温度

何故、ここまで冷え切るまで我慢するのか

「冷たい」

「う、…っ」

息が交わる程に近いからか、フジくんが目をぎゅっと瞑ってしまった

恥ずかしいのか、何なのか

脚で彼の腰を巻き付けて座らせる

そのまま前のめりになって抱き着くように

「ね、どうしたの、」

「こうしたくなった」

何故か彼の友人に会うとどうしても抱き締めたくなる

心に何か込み上げるように

「…有難う」

「何が」

「俺の事、守ってくれて」

『情けないね』なんて言って私の背中に手を回す

大きな手が触れて、更にぎゅっと

「私は、」

爪が立つ

「私は、フジくんのこと」

震える唇で

「嫌ったり、しないよ」

逃げるように、そう言った