ただ、縋られたいだけ。【fj】 (ページ12)

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「ごめんね、急に呼び出して」

「ううん、大丈夫」

何だか、デジャヴな気がするが

今日は翌日の昼にもう一人のメンバーであるヒラくんに呼び出された

少し高い声が耳を癒してくれる

私は彼が好きだ、勿論友人的な意味で

優しい、とはかけ離れるほどに自然に毒を吐くが

「フジとはどう？」

「そうだね、」

『いい感じに溶けてきてるよ』

そう柔らかく告げた

すると彼はまた、ふふっと笑う

頬杖を付いて、嬉しそうに

「良かった」

「何が？」

「キヨに勘違いされてたままかと思ってた」

一度、アイスティーのストローを回す

カラン、コロン

「その分だと大丈夫だったみたいだね」

「ああ、アレは急ぎ過ぎでしょう」

「キヨったら話聞かないで突っ走っちゃってさあ」

愛しいような、そんな微笑み

勿体ぶるように氷を弄ぶ

「正直ね、フジは僕らだけじゃ保っていられないと思うんだ」

「…またそういう事」

「真剣だよ」

本当に、何の他意もない目

冗談交じりに流そうとした私の顔が引き攣った

喫茶店の店内BGMが煩いほど響く

「フジは、」

「フジくんってね」

ヒラくんが口開くその前に

私は少し声を張って遮った

「あまり、素直になれない人でしょ」

黙って頷いた

それはきっと、私より長い付き合いの貴方達の方が分かってる

「の癖に、他人に対しては変に饒舌」

大丈夫？とか手伝うよとか

好きだとか愛してるとか

「普通の人からしたら、そっちの方が素直になれない事を簡単に言っちゃう」

また、黙って頷いた

「キザな男、なんて言葉忘れたみたいに普通になってるの」

私達はそんな彼しか知らないから

それ以外の彼なんて、人が違うように違和感がある

それを責め続けたら

それに、甘え過ぎたら

「私達、なんて括りじゃ留められないよ」

「Aちゃん…」

困ったように笑う私は、ヒラくんの目を見ることなんて出来なかった

「キヨくんにも言ったけどさ、別に取って食べやしないから」

「それは勿論、僕は分かってるよ」

「…ヒラくんが一番理解者かもね」

照れるように笑う彼に頬が緩む

フジくんを思う気持ちは皆同じ

それは分かってる、大切なメンバーだもん

でも私は、恋愛的に彼を満たさないと

それでもね

「愛してる、なんて返したら終わりなんだよ」