【異d!】凍餒 (ページ2)

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王国 : 城内個室

「オプロイテさん、彼女大丈夫そうですか…？」

「大丈夫よ、取り敢えずの処置だけど」

女性という事もあり、オプロイテにより廊下へ締め出された俺達。
漸く許可が降り部屋の中に入ると、首筋にガーゼを貼られた横顔が目に入る。

腰掛けているベッドのシーツを微力に掴む様子は怯えているようにも見えたが、表情は微動打にせず窓の外を眺めている。

「…君、どこから来たん？」

誰も何も発さないものだから、ここは僕の役目かとぼーっとする少女に一歩近付く。

ゆっくり振り向くと広場で会った時の様に目が合うが先程の潤いは幽かになり、重たげな瞼が自身を捉えた。

「あっあの、この国の人じゃ…ないですよね？」

僅かに怯える少女。
間に耐え切れなくなったのか続いて問い掛けたロボロは俺の横に並んで少女の方を向いた。

俺とロボロを交互に見た少女は、薄い唇をふ、と動かし始めた。

『あの、此処…此処の教会の枢機卿様に…』

「おやおや、皆様お揃いで？」

突如背後から響いた厭に落ち着いた声は、御加護を纏ったかの如く凛としたもの。

振り返れば腕を背に回して仁王立つ教会の主とも言い例えられるであろう男が一人。
ほくそ笑む表情が首を傾げ、オプロイテの「枢機卿様」という声に軽く頭を下げた。

俺とロボロの間を割り込んで部屋に入る彼の様子は、いつものような冷静さが僅かに欠けているような気がした。

「枢機卿？何故貴方が…」

『オスマン様…！！』

俺の言葉を遮って風を起こしたのは、紛れもなく先程まで感情の波を感じなかった少女。

チリン、と耳元から心地好い音を鳴らして横切って行く。
行先は迷うこと無く枢機卿の胸の中。

半歩蹌踉けた枢機卿は微笑みを崩すことなく抱き留めると、同一人物とは言えないほどに警戒心の緩んだ彼女の頬擦りを嬉しそうに受け止めた。

「噂通り、でしたね」

「す、枢機卿、彼女とお知り合いなのですか…？」

少女に向けていた微笑みを俺達にも送り、「あぁ」とその腕に掛る髪を愛おしそうに掬い上げながら言う。

「彼女は私が呼んだんです…A、皆さんに自己紹介を」

『！…はい』

恐る恐る、と言う風に向き直すと、安堵に変わった瞳色が陽射しを含んで反射した。
眩しくて目を細めてしまうが、しっかりと彼女の声を聞き入れようとする。

『Aと申します。北方から参りました聖女です』

恥ずかしげに頭を伏せた少女の耳に揺れる飾りに、先程の鈴音の正体が分かった。