【fj】聞こえますか、僕らを呼ぶ雪の音が (ページ9)

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彼女は直ぐに立ち止まって、驚いた顔をして俺を見る

その彼女の目の前に立つと、大きく息を吸い込んだ

溜まりに溜まった自己中心的な自身を、我儘を吐き出した

「俺、本当に馬鹿だ」

『フジく、』

「勝手に劣等感抱いて、被害妄想ばっかして」

彼女は驚いた声を漏らすけど、俺も構わず吐き出した

「ずっとずっと俺何かって思ってて」

「釣り合わないって、笑わせてあげることなんて自力じゃ出来ないって」

「最初から、諦めてた」

「気付かないふりして、さっきも、そう」

はあ、と一度息を付いて彼女と目を合わせる

ほら、その潤んだ瞳

一度目が合うと離れられない

目と目が合って、初めて気付いて

このまま、溶けない雪の上でずっと

時が、止まってしまえば

「触れられたのが、怖くて」

「こんな事したらAが誤解されて、俺が迷惑かけちゃうって」

「自分が負けるのが怖くて、逃げたんだ」

「俺、本当に、」

俺を見詰める彼女の目は心無しか潤んでいて

それ見て、思わず手を伸ばしてしまった

もう嫌われる覚悟で抱き締めた

寒さで冷え切ってしまった肩を覆い隠す様に、小さい彼女を

もう、本当に止まってしまえば

合った目も、逸らさないでいいのに

触れた手も、退かなくていいのに

雪と反比例する暖かさを、離さないでいいのに

このまま、

「…本当に、Aの事」

『フジくん』

震える声を発した彼女に力が緩む

少し離れると彼女は顔を上げて笑った

『…目を、見て』

「っ…」

『ね、お願い、目を見て』

彼女が目を細めて零した涙に雪が反射する

彼女の頬に伝った涙を追うように俺の頬にも涙が伝った

夜の雪が降る道で、静かな夜道で

「俺、ずっと、」

『うん』

「ずっと前から、Aの事が、」

『っ、うん』

俺たちにより一層大きな雪が降り注ぐ

「大好き、です」

『うん、』

「俺と、付き合って、下さ…っ」

『うん、うん！』

彼女が俺の頬をグイッと拭って抱き締めて来る

『私も、フジくんが好き』

お互いを跳ね除けていた暖かい温度がやっとくっ付いた様な感覚がして

「ほ、本当に？」

『本当に、ずっと、前から』

二人の小さな笑い声と

静かに響く雪の音が、聞こえたような気がした