【fj】聞こえますか、僕らを呼ぶ雪の音が (ページ5)

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寒波はまだ留まる

寒い教室にはストーブが焚かれているけど、全く意味が無い

教師の語りにシャーペンを握る指が冷え過ぎて追い付かない

鼻を啜る音が時偶に聞こえるこの時期に筆記は厳しくて、嫌になる

でも、明日はもう冬休みが始まる

そんなの構わず俺らは何も言わずとも集まるんだろうけど

こーすけは彼女が居るし、ヒラは年始にかけて帰省するらしい

キヨと彼女と俺、残された三人は明日も集う事になっていた

「はい、此処は取り敢えず冬休みに復習すること」

そう言いながら教科書や書類を教卓で纏め始める教師を合図に号令が掛かる

午前授業の最後は思いの外早くて、クラスメイトは我先にと帰り始めている

重たい課題が詰め込まれた鞄を肩に掛けて彼女とキヨの方を振り向く

もう楽しそうに談笑している二人にズキズキする心が嫌になった

俺に気付いたキヨが笑って、彼女も手招きをする

そこに近寄って、俺も笑う

「明日、どうする？」

「俺ん家でゲーム？」

『相変わらず引き籠もり』

「お前もだろが」

人の少なくなった教室を三人で後にして学校を出る

あっという間だった一年は何故か俺に寂しさを覚えさせる

この一年が終わって、来年クラスが変わってしまったら

実際、話す機会なんて無くなるんじゃないか

この三人で騒いで、隣には小さな彼女が歩いて居て

『フジくんは？予定大丈夫なの？』

「え、俺？」

『うん、ほら、…彼女とか』

「はは、ないない」

ある訳ない、だって俺は

…ほら言えない

当たり前の風景なんて直ぐになくなってしまって

『あ、やば』

「どした」

「忘れ物？」

『ううん、明日発売のゲーム予約してたから忘れないようにしなきゃって』

「ややこしいんだよ」

こうやって下らない事で馬鹿言い合って

この二人の隙間に入れてもらっている俺の立場なんて直ぐに消え去って潰れて

…凄く、虚しくて寂しい

『明日さ、そのゲーム持って行くからさ』

彼女が俺とキヨの背をドンッと叩く

その振動にハッとして

『二人で実況、して見せてよ！』

繋ぎ止める何かを

『ね、未来の有名実況者さん』

彼女は遺してくれている事を思い出した