クリスマスの過ち4 ページ46
ごはんをよそって、温め直したお味噌汁を注ぐ。
小皿に昆布、お漬物、焼き海苔を乗せて。
きんぴらごぼうを小鉢に。
鯵の干物の火加減を見ながら、茹でたほうれん草に鰹節をかける。
豚肉のそぼろ、焼き鮭が半身。
生卵が食べたいって言っていたけれど、今朝はどうかな?
「できたよ、今朝の残り物だけど」
「ん…ありがと」
目を擦りながら、トレイを受け取ると、テーブルには移動せず、そのままカウンターで食べ始めた。
んま、って。
そう?良かった。
「LINE…」
「ごめん、さっき見た」
「だと思った」
「なんかスタンプ押しとく?」
「今更?いらない」
「送る、送っとくよ、送ったよー」
トレイの横に置いた岳くんの携帯電話が鳴った。
おかえりなさい、のスタンプを受信した音。
岳くんは無言で確認をし、私の画面には既読の文字が浮かび上がった。
ずず…とお味噌汁を啜ったあと、あち、と言ってふうふう息をお椀に吹きかけていた岳くんはなかなか冷めないおつゆを飲むのを一旦止めたのか、お椀をトレイの上に置き直した。
「あのさ」と薬缶に火をかけている私に岳くんが話しかけてきた。
「仕事、いつまでやるの?年内」
「あしたの朝ごはんまで作りにくることになってるの」
「広島戦、観に行く?」
天皇杯の準々決勝が24日にカシマスタジアムで行われる。
クリスマスイブはココのデリバリーが戦場と予想されるから、私はお昼には手伝いに行く予定だ。
お店でラジオ流してみんなで応援しながら働くよ、とお味噌汁が入っていた大鍋をたわしで洗いながら私は言った。
「ココさんの店、何時に終わんの?」
「一番忙しいのは夕方だから、8時には終わる予定」
「あのさ…」
何か言いたいことがあるのに、言いにくそうにしている。
岳くんは後頭部をがしがし掻いて「あのさ」ともう一度言った。
「仕事終わる頃、店に行くよ」
「お店に?ココにお土産なら渡しておくよ」
「土産、いや、そうじゃなくて、そのココさんじゃなくて、あの」
「ん?」
蛇口をひねり、水を止めた。
「どうした?」
「なんか予定ある?仕事が終わってから」
「無いけど…なに?」
「家に行っていい?」
岳くんは真っ直ぐ私の目を見てそう言った。
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シナノ(プロフ) - まるみかんさん» 私も代理人じゃなくうちの河上を派遣しますよ?と思いました(笑)ネガティブな報道が出ていて真実は解らないですが、早くトレーニングしている姿を見たいですね。今飲んでる生姜の葛湯を飲ませたいなぁ。 (2017年2月15日 20時) (レス) id: bcbad8d595 (このIDを非表示/違反報告)
まるみかん(プロフ) - 本物の柴崎さんがスペインへ移籍し、体調不良の報道を日々聞くと、河上さんに現地に行ってもらって元気になってもらいたい欲がすごくてでしまいまして…。日々、報道を聞くたびに「河上さーん!」と心のなかで叫びながら妄想してることをここにご報告致します(笑) (2017年2月15日 20時) (レス) id: a45c69a6d5 (このIDを非表示/違反報告)
シナノ(プロフ) - ゆいなさん» この後、波乱の展開にしたくてそこまでは一気に頑張ろうかと。まったりお付き合いくださいませ。 (2017年2月13日 7時) (レス) id: bcbad8d595 (このIDを非表示/違反報告)
ゆいな(プロフ) - 久々に河上さんと岳くんのおしゃべりが読めてとても嬉しいです! (2017年2月13日 3時) (レス) id: 98c1bb9861 (このIDを非表示/違反報告)
シナノ(プロフ) - wakoさん» ショウマの下りは上手いこと書いたな、私!と小踊りしましてね…(笑)ナチュラル人タラシめ!本気でお世話してくれる恋人がいたらいいな、と思っていますよ。可哀想すぎる。時間もあまり無くて、でも焦っても欲しくない。頑張ってね。 (2017年2月10日 19時) (レス) id: bcbad8d595 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:シナノ | 作成日時:2016年8月25日 19時