借り5 ページ5
「りん、可愛かったでしょ?」
素直になろうとしたら先に謝られて、妙にこそばゆく話題を変えてみる。
「俺の子って言われた」
ココが言いそうな悪い冗談だ。
私は意地悪く大袈裟に驚いた。
「そうだったの!ああ、だからね!岳くんがお父さんで納得。りんってば気難しい子だと思っていたの」と目を見開いて言うと、岳くんも「気難しいのは母親似じゃないの」と応戦してくる。
あはは。当たり。
でもそれココに告げ口していい?
ひとしきり笑い合うと岳くんは再び 「ごめん」と言った。
「なんか楽しかったじゃん?Skypeで喋んの」
「え?あ、うん」
もちろん。
でも岳くんが楽しかった、と思っていたことに驚いた。
だって一方的に私ばかり喋っていたから。
「なんで?そんな意外?」
「だって岳くん、あんまり喋らなかったじゃない?私ばかりずっと喋っていたし、他の作業してたり」
「うん…それでも楽しかったんだよ。練習やドイツ語のレッスンが終わって家に帰ってきた時にAとSkypeすんの楽しみだったし、大事な時間だったと思ってた」
窓の外を見ると真っ暗で、目を凝らして見ると、私が今、馴染んでいる景色はなかった。
懐かしい昔の思い出が広がっていく。
ふるさとの光景が窓の外にあった。
「あと、15分くらいかな」と岳くんは私をちらっと横目で見て独り言のように呟いた。
「Aに彼氏ができたら、もう俺の相手なんかしないだろうし…じゃなくて、邪魔しちゃいけないし…っていうんじゃなくて…だから、その」
「……?」
「なんかヤだったんだよ」
「……??」
「いや、せっかく友達になってさ、楽しかったのに、Skype。そんな時間なくなるの、ヤだったっつーか……ってなんで笑ってんの?笑うとこじゃないでしょ」
「やー、岳くん、よく喋るなぁと思って…ぷっ!」
「普通だし!普通にこんくらいいつも喋るし!!」
「全然普通じゃないよー、いつも私が喋ってるじゃない」
「それはそうだね」
「でしょう?」
なんでそんなにドヤ顔なの、と岳くんは苦笑いして「だからまたSkypeしよ」と言った。
私はそれの返事の代わりに「たこ焼き食べた?」と聞いたら「日本のスーパーで冷凍のあって買ったけど、なんか違かった」と岳くんはぶつぶつと文句を言った。
ホッとした。
つかえていた石がコトン、と音を立てて落ちていった。
水がどんどん流れるようにお喋りをした。
聖真くんとココに借りができた。
美味しいたこ焼きでも作ってあげよう。
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シナノ(プロフ) - まるみかんさん» 私も代理人じゃなくうちの河上を派遣しますよ?と思いました(笑)ネガティブな報道が出ていて真実は解らないですが、早くトレーニングしている姿を見たいですね。今飲んでる生姜の葛湯を飲ませたいなぁ。 (2017年2月15日 20時) (レス) id: bcbad8d595 (このIDを非表示/違反報告)
まるみかん(プロフ) - 本物の柴崎さんがスペインへ移籍し、体調不良の報道を日々聞くと、河上さんに現地に行ってもらって元気になってもらいたい欲がすごくてでしまいまして…。日々、報道を聞くたびに「河上さーん!」と心のなかで叫びながら妄想してることをここにご報告致します(笑) (2017年2月15日 20時) (レス) id: a45c69a6d5 (このIDを非表示/違反報告)
シナノ(プロフ) - ゆいなさん» この後、波乱の展開にしたくてそこまでは一気に頑張ろうかと。まったりお付き合いくださいませ。 (2017年2月13日 7時) (レス) id: bcbad8d595 (このIDを非表示/違反報告)
ゆいな(プロフ) - 久々に河上さんと岳くんのおしゃべりが読めてとても嬉しいです! (2017年2月13日 3時) (レス) id: 98c1bb9861 (このIDを非表示/違反報告)
シナノ(プロフ) - wakoさん» ショウマの下りは上手いこと書いたな、私!と小踊りしましてね…(笑)ナチュラル人タラシめ!本気でお世話してくれる恋人がいたらいいな、と思っていますよ。可哀想すぎる。時間もあまり無くて、でも焦っても欲しくない。頑張ってね。 (2017年2月10日 19時) (レス) id: bcbad8d595 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:シナノ | 作成日時:2016年8月25日 19時