無意識のゼロセンチ ２

そして、それから７ ページ29

三竿くんと優磨くんが陸上の選手たちを真似て剣を抜くポーズを見飽きた頃、安倍さんがマリオになって、2020年は東京！と宣言して、地球の裏側でやっている大きなお祭りは閉幕した。
ナオが買ってきてくれた小さなキラキラ光るストーン付きのビーチサンダル。
ポンデケージョミックスとか日本でも買えるのに、こんな重たいの持って帰ってきてくれて、かわいい男の子だ。
見た目は怖いけど。

お盆過ぎてもまだまだ残暑厳しくて、食が細くなっている選手たちがどうやったらお箸を動かしてくれるか。

宮崎の冷や汁とかどうかしら。
秀平くんのお母さんなら作り方知ってる？
あの子は鹿児島だったっけ。
鹿児島だったら鶏飯もいいなぁ。

頭を悩ませ、献立ノートにペンを走らせる。


「きんきんに冷えたコーヒーちょーだい」


ずんだ餅、作ろうかな。
ヤスくんに聞いてみようか。


「ねー、アイスコーヒー」


で、今日は鶏肉とお豆腐のハンバーグに梅ソースをかけるから、そろそろ下ごしらえしないと。


「ちょっと！A！！」

「あのね、ここは喫茶店でもなんでもないの。それに関係者立ち入り禁止だからね？」

「もう関係者みたいなもんじゃん」


口を尖らして、アッツーとキャミソールの胸のあたりを引っ張ってぱたぱたと手で扇ぐココにアイスコーヒーを出してやった。

クラブハウスにいる選手やスタッフにお弁当を届けた帰りに、暑いだの疲れただの言いながら寮に寄るのがここ最近の日常だ。

管理人のおじちゃんやおばちゃんにおかずの差し入れしたりして「ココちゃん、りんちゃん連れてきなよ」なんて可愛がられてる。
ちゃっかりしてるわ。


「ここ若い子いっぱいいるんだから、そんな刺激的な格好で来ないでくれる？」

大きく胸の開いたキャミソール姿でコーヒーを一気飲みするココを睨みつけても、ココはそんな私の忠告もお構いなしだ。

「ね、ユーマの部屋どこ？あの生意気な子をココ様が説教してあげるわ。んー、でもコイちゃんもかわいいよね？ミサオもいいし、オーハシも良いっ」

まだ寮に帰ってこないの？
いつ帰ってくんのさ？
私も夕飯食べて帰ろーかな。
風呂ってどこ？
脱衣場で隠れてよーかな。

不埒なことを言い出したココに「サボってないで早く帰んなよ。まだ仕事残っているんでしょ？」と叱ると、Aって昔からつまんなーい、と氷をガジガジ噛んで文句を言ってる。

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