無意識のゼロセンチ ２

そして、それから５ ページ27

日本で良い事はたくさんあったよ。
言葉は通じるし、和食は美味い。
実家でのんびりできたし、アントラーズは１st優勝したし。
トレーニングは今までにやったことない新しいものを取り入れて、効果を感じられたし。

それが良い事かどうかは解らないけれど、Aとの関係が修復された。
付き合っている奴なんかはいなくて、Aの両親は俺らがまだ付き合っていると思ってる。
うちの家族もそうか。

敢えて否定するのも面倒くさくて、そのまま放置してきちゃったけれど、俺たちの中ではもう解決している。
でも友達という関係のAも悪くない。
前よりもっと楽になれた気がする。
異性との友情なんて有り得ないって思っていたけれど、Aとならアリかもしれない。
こっちに帰ってきてから、ほぼ毎日Skypeで話をしている。
普通に楽しい。


「聖真くんがね、岳にちゃんと渡してくれた？ってしつこく聞いてくるんだけど、アレ、何だったの？」

「アレ？」


テーブルの上に置いてあったDVDのパッケージを見せてやると、Aは眉間に皺を作って口をぱくぱくさせ固まっている。


「なに、そのリアクション」

「がっ、岳くんがそういうの観るなんて…」

「観るし、普通に」

「ショック…」

「男ですから」

「私と付き合ってる時も！？」

「まぁ、普通に」

「うわぁ…知らなかった…」

「ってか、さ。こういうので処理しなかったらA大変だったよ？」

「何が？」

「20代男子のセーヨク舐めんなよ」

「わぁ、そりゃ良かったわぁ、20代男子のお相手できないし、私」


って！？
そっちの方がショックだわ！！


こんな会話も付き合ってる時にはできなかった。
友達だからできるのかもしれない。

カルロスの話や、あのヒゲもじゃのカルロスと強面のナオがハグしてるのを思い浮かべたら、ずっと笑いが止まらくて勉強どころじゃなかった。
そんな話をすると、Aも一緒になって笑って聞いてくれた。


「そういや、荷物に入ってたナッツの蜂蜜漬けってもう食っていいの？」

「大丈夫だよ、本当は半年くらい漬けると最高に美味しいの。今、漬けてあるから、今度帰ってきたら出してあげるね」


ナッツを低温でローストしてね、蜂蜜を注ぐの。
その蜂蜜は、鹿嶋の蜂が集めた百花蜜だよ。
ヨーグルトにかけて食べてね。

笑える話も、下ネタも、食い物の話も友達となら尽きることはない。

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