少し悔しい3 ページ19
召し上がれ、とAが差し出してくれた皿をうまそう、とにやけながら受け取った。
目玉焼きの真ん中を箸で刺すとぷちっと割れて黄金色の黄身がとろりと流れ出る。
それをソース焼きそばに絡める。
かつおぶしと青海苔と焦げたソース。
たっぷりの野菜と豚肉。
うまい。
うまそう、じゃなくて、うまい。
「どこの席で観てたの、試合」
「メインのいい席をおじちゃんが取ってくれてね、岳くんは解説席のとこ?」
「うん、篤人さんやサコさんと一緒だった」
とりとめない会話。
別にしなくてもいい話。
でもこんな会話が普通に楽しい。
「食いたかったんだよね、ソースが焦げた系の飯」
「たこ焼き食べたいって言ってたもんね」
「そうだ!ほんとにAは飯テロ投下してばっかだよ」
「飯テロって?」
「毎回毎回美味そうなもん食っててさ。それを予告なく見せつけてくるでしょ。善良な市民を空腹で悶絶させるようなテロ行為だからね?こっちの身にもなって」
Aは、ふふふ、と含みを持つように笑っている。
笑いながら、言い訳するように「だってSkype立ち上げる時間って私のごはんの時間なんだもん」と言った。
その時、玄関のチャイムが鳴りAは、「ちょっとごめんね」と席を立った。
ひとりになった食堂で食器に箸が当たる音と麺を啜る音が響く。
暇。
つまんね。
ちょっとひとりになっただけなのに。
テーブルに置いた携帯を触ろうとした時、廊下の方から騒がしい音が聞こえた。
話し声とバタバタと歩く足音。
そしてバタンと荒々しくドアが開く音がし、大きな段ボール箱を抱えた男とその後を追うAが入ってきた。
「この間のトマト、3分の1くらいカビ生えてたり、傷んだりして、使えないやつでしたよ?」
「あ?そっちの保管がダメだったんじゃねーの。この時期だし」
「そんなことないですって。届いた次の日にダメになるなんてこと、先代のおじさんが持ってきてくれていた今までにはなかったことですよ?」
「俺が悪いっつってんの?」
凄まれたAは「そうは言ってませんよ」と言い淀んだ。
ドン、と乱暴に調理台の上に置かれた段ボール箱を「もっと丁寧に扱ってください」と注意すると「いちいちうっせーな」と畳み掛けるように怒鳴られているAが居たたまれなくなり、箸を置いた。
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シナノ(プロフ) - まるみかんさん» 私も代理人じゃなくうちの河上を派遣しますよ?と思いました(笑)ネガティブな報道が出ていて真実は解らないですが、早くトレーニングしている姿を見たいですね。今飲んでる生姜の葛湯を飲ませたいなぁ。 (2017年2月15日 20時) (レス) id: bcbad8d595 (このIDを非表示/違反報告)
まるみかん(プロフ) - 本物の柴崎さんがスペインへ移籍し、体調不良の報道を日々聞くと、河上さんに現地に行ってもらって元気になってもらいたい欲がすごくてでしまいまして…。日々、報道を聞くたびに「河上さーん!」と心のなかで叫びながら妄想してることをここにご報告致します(笑) (2017年2月15日 20時) (レス) id: a45c69a6d5 (このIDを非表示/違反報告)
シナノ(プロフ) - ゆいなさん» この後、波乱の展開にしたくてそこまでは一気に頑張ろうかと。まったりお付き合いくださいませ。 (2017年2月13日 7時) (レス) id: bcbad8d595 (このIDを非表示/違反報告)
ゆいな(プロフ) - 久々に河上さんと岳くんのおしゃべりが読めてとても嬉しいです! (2017年2月13日 3時) (レス) id: 98c1bb9861 (このIDを非表示/違反報告)
シナノ(プロフ) - wakoさん» ショウマの下りは上手いこと書いたな、私!と小踊りしましてね…(笑)ナチュラル人タラシめ!本気でお世話してくれる恋人がいたらいいな、と思っていますよ。可哀想すぎる。時間もあまり無くて、でも焦っても欲しくない。頑張ってね。 (2017年2月10日 19時) (レス) id: bcbad8d595 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:シナノ | 作成日時:2016年8月25日 19時