44話:合宿2日目 ページ45
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昨日の黒い海の波音が、今でも耳に焼き付いている。
それと同時に、藤井くんが菜沙那の髪に触れていた場面がフラッシュバックする。
当然のように浮き出た目のクマが、私の睡眠不足を表していた。
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菜「A、おはよう」
『…ぁ、おはよう!』
菜「…あら?それ、……クマ?」
『あ、えと…慣れない環境だから中々寝付けなくて…』
菜「そうなの…。体調には気をつけてね」
『うん!』
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クマの原因は、あなたです。
なんて、言えるわけない。烏滸がましい。
そもそも自分の嫉妬のせいやし。
菜「もう7時前ね…。食堂行きましょうか」
『あ、うん!』
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軽く朝ごはんを食べて、朝練開始。
今日は、まだ、藤井くんと話してへん。
いや、話せへん。
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それでもやはり気になるもので、ふとグラウンドに目をやると、大毅が視界に入った。
……そういえば、昨日の大毅、なんやいつもと違う様子やった。
すごく。
なんだかものすごく。
______________________……男の人だった。
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昨日繋がれた右手が、熱を持つように脈打つ。
私は、今初めて、大毅を男の人だと実感した。
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作者名:りんな | 作成日時:2017年4月24日 18時