14ー1『正体』 ページ12
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『……兄さん、まだか?』
「あ?もうちょっと待て。……やっぱ青、か…?いや、黒も…」
『兄さんこの前ので良いってば…』
はぁ、とため息をつく。
今日の夕方から、兄さんの任務の手伝いとしてパーティーに出ることになったのだが、兄さんが私のドレス選びに張り切ってしまっている。
何着たって一緒だろうが…
「よし決めた。A、これとこれ着ろ。靴はこれな」
そう言って兄さんに差し出されたのは白色のパンプスに水色のシンプルなドレス。
…またこういうの買って…
『兄さん、勿体ねぇからこの前のでいいって…』
「んなことはねェよ。お前はもっと着飾った方がいい。せっかく綺麗な顔してんだからよ」
するり、と兄さんが私の頬を撫でる。
擽ったくて少し目を細めると、兄さんは愛しそうに微笑んだ。
『…分かったけど…暫くは買わなくて良いからな』
「わぁったよ(…ドレス以外を買えばいいんだろ)」
『ちなみにドレス以外でも却下な』
「…ちっ」
兄さんの考えてることなんてお見通しなんだよ、と言わんばかりに舌を出せば、コツンと軽く小突かれた。
・
と、言うわけでパーティーへ来た。
がやがやと騒がしい会場の中は、香水やらお酒やらで少々臭う。
が、我慢していつもの仕事着に身を包んだ兄さんの1歩後ろを歩く。
きょろ、と視線だけで辺りを見回す。
『…(まだターゲットは来ていない、か)』
今日の任務は、可能であればとある男の捕獲。ダメなら処分という内容だという。
事前に兄さんから
「いいかA、黒髪に灰色の目をした男を見たら注意しろ。そいつがターゲットかもしんねぇ」
と言われている。
詳しい事情は聞いてないが、取り敢えず見つけて確信を持ったら兄さんに報告すればいい。
貰ったドリンクに嫌な気配が無いのを確認してから、口に含んでまた視線を外に向けた。
『!』
入口から新たにやってきた黒髪に灰色の瞳をした男に目がいく。
私の感が告げる、あれがターゲットだと。
くい、と控えめに服を引っ張ると「ん?」と兄さんが振り向いたので、不自然に思われないように小声で伝える。
『兄さん、入口から少し離れたテーブルにいる男…多分、その人じゃねぇか?』
「…あぁ、間違いねぇコイツだ」
兄さんに伝えたは良いものの、この後どうするかは私は知らない。
下手に動いて足を引っ張りたくないので、黙って後ろを歩き続けた。
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イアデビル(プロフ) - とても面白いです!最新頑張ってください!!応援してます!! (2020年3月14日 16時) (レス) id: ef5404f845 (このIDを非表示/違反報告)
佐倉優衣(プロフ) - まゆさん» 遅くなり大変申し訳ありません!ありがとうございます!! (2020年1月12日 14時) (レス) id: c735a0a519 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 続編おめでとうございます^_^すごく面白かったです^_^続きが、すごく気になります^_^これからも、頑張って下さい^_^ (2019年8月8日 13時) (レス) id: 35cf1a0a87 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:佐倉優衣 | 作成日時:2019年8月6日 16時