君に恋して。 (ページ21)

今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:29,043 hit

side of S.K ⑨ ページ21

.
.

『ったくあいつ……』

さっきまでの悩みが嘘みたいに、口元がふっと緩む。

『電話、してみるか… 』

久しぶりの連絡に
少し緊張しているのか、気を紛らわすためにコールを無意識に数える。

「…もしもし？」

出た。

『もしもし、加藤です。今電話大丈夫ですか？』

「はい…」

『えっと…』

やべぇ、勢いで電話しちゃったけど
何て言うか考えてなかった。

「……？」

『…ごめん、電話したくせに
本当はこれと言った用はないんですけど…』

「え…？」

いいやもう、ここは直球に…。

『…この前、なんか俺変なこと言っちゃったかなって。Aさん、泣いてませんでした？
もし俺のせいだったら…

「違うんです…！
全然…っ、加藤さんのせいじゃないです。」

俺の言葉を遮るAさんの声は少し震えていて、またあの時の顔が頭に浮かぶ。

『…じゃあ、なんで泣きそうになってるんですか？』

もうAさんには泣かないでほしい。

『 …今日、会えませんか？』

そう思うのは、Aさんが好きだから。
すごい簡単な事だった。

『いつものカフェで。これから少し仕事なんで、20時ごろ。待ってます。』

.
.

電話を切ると、小山が入ってくる。

「シゲー、次シゲのカットの番だよ」

『あぁ、今行く。』

「なんかシゲ、
『別に緩んでねーよ？』

気合いを入れてスタジオへ向かう。

「まだなんも言ってないけど…」

.
.
.