君に恋して。 (ページ19)

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side of S.K ⑦ ページ19

『今度出す新作です。
Aさんに早く読んで欲しいなと思って、特別に。
こんなこと言ったら丸山くんに怒られるかな。』

俺の小説を毎回楽しみにしてくれている先輩だ。

( Aさん、どんな反応するかな… )

「良いんですか？嬉しいです！
実は私、今までの加藤さんの作品全部読んだんです。すごく面白かったです。」

Aさんが俺の小説を読んでくれてた事と、今まで見たことない笑顔に、一瞬動揺した。

『…それも読んだらまた感想教えてください。』

「はい！もちろんです。」

( その信頼しきった笑顔、ちょっとズルイ。)

それから1時間ほど
他愛もない話をして、
お店の閉店時間が近づいてきた。

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「今日は遅れてすみませんでした。
本もありがとうございます！大切に読みますね。」

『うん、ありがとう。』

前よりAさんは俺と気楽に話してくれてる気がする。そんなAさんを見ると、俺も気が緩む。

「っ…じゃぁ、また…」

俺も軽く会釈をすると、Aさんは駅へ向かっていく。

『…やべーな。』

離れていくAさんの後ろ姿を見ていると
どこか寂しく、

気づいたらAさんの方へ足が向かっていた。

『待って…！』

「どうしたんですか？」

『送ります、家まで。』

「そんなっ、良いですよわざわざ…申し訳ないです。」

『もう随分暗いし、iPhoneも使えないんでしょ？また変に心配するくらいなら、ちゃんと送り届けた方がマシです。』

これも本心だったが
やっぱり俺は、どこか口実を探していた。

「…心配、してくれるんですか？」

Aさんは困りながらも少し頬を赤らめ、その言葉に、俺は冷静さを取り戻す。

( 心配なのは間違いないけど、それは… )

友達だから？

『いや…まぁ、するでしょ？
Aさん、"女の子"なんだし。』

なんて、曖昧な返事をしてしまったんだろう。

「本当に大丈夫です。ありがとうございます。」

そう言って去っていくAさんは、目に少し涙を浮かべてた気がした。

『あーもう…！なにやってんだよ俺… 』

Aさんはきっと、俺のこと友達として信頼してくれてる。

『少し、落ち着こう。』

その後、家についたとの連絡があったが

帰り際のAさんの顔が頭から離れず、返信できなかった。

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