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story6-2 ページ12

「え………」


加藤さんの、初めての直球の言葉に
また胸の奥がギュっとして 涙が出そうになった。



『ねぇ、今泣くところ?』


「いえっ…、これは 嬉しくて…っ」


ぐっと急いで涙を拭う。

その姿を見て加藤さんは、ふっと笑う。



『 仕事上、悲しい思いさせたり、寂しい思いさせたりしちゃうかもしれないですけど
でも 絶対泣かせたりしないし、もっとAさんの笑顔が見たいなって思って。
だから…良かったら、彼女として一緒に居てくれませんか?』



堪えてた涙が、またポタリと落ちる。



「 ……っ、私で、良いんですか?」


『 Aさんが良いんです。』




私は黙って頷いたあと、



「 …よろしく、お願いします。」



小さな声でつぶやいた。




それを聞いて加藤さんは安心したのか
大きく息を吐いて力を抜く。




『 はぁ…良かった…』


「え?」


『 断られたらどうしよう、ってすげー緊張した。』



加藤さんは、今日会って初めて笑顔を見せた。



「 アイドルでも緊張するんですね。」

『 それ関係ないから!』




2人で顔を見合わせて笑う。




「 あ…加藤さん良かったら本当に上がってください。寒いですよね…」



『いや、今日は遠慮しときますよ。』


「そうですか…?」


『ていうか敬語やめません?
あと…"加藤さん" って言うのも。』


「 急にそんな変えられ…るかな…
えと…なんて呼べば良いですか?」


"あ、ほら敬語"
と、加藤さんは意地悪そうに言う。



「ごめんなさ…い。」


『 ははっ、少しずつ慣れるよ。
呼び方は…まぁ、普通に" シゲアキ " とか?』


「シゲアキくん…?」

『…うん。』



自分で決めといて、少し恥ずかしそうな顔をしている。


『 ごめん、なんか俺も慣れないかも。
今日は帰るね。遅くにありがとう。』



そう言ってシゲアキくんはドアに手をかける。



『 じゃぁね、下の名前 』

「……!」



シゲアキくんは、私を下の名前で呼び
そのままドアを閉めた。



「ずるい……」



きっとドアの向こう側で照れてるシゲアキくんを想像すると、自然と口元が緩んだ。




.

.

.

iPhoneを手にとって
シゲアキくんにラインをいれる。



" 気をつけて帰ってね。"

" うん、おやすみ。"




そんな些細な会話も

今日からまた、違った景色に見える。


.
.
.

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作者名:しょま。 | 作成日時:2019年1月11日 1時

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