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俺を助けた(おそらく)少年は、白い毛の、犬だかヤギだかわからない見目をしている。黄緑と黄色の横縞の服を着ていて、首からハートのロケットを下げている。白い毛は見てわかるほどふわふわしていて、思わず伸びそうになる手を爪が食い込むほど握りしめた。
「ん、よろしくアズリエル」
「ひさびさに“ラボ”に遊びに来てみたら、キミが倒れてて驚いたよ。本当に身体は大丈夫?」
「多分大丈夫じゃないんだろうけど俺は大丈夫!」
コクコクと頷くと、アズリエルは安心したようにふわっと笑う。
「⋯⋯! よかった⋯⋯ところで、君の名前は? ここじゃ会ったことないモンスターだよね?」
「俺やっぱ人間じゃないのね。いやそれが、ここに来る前のことよく覚えてなくて。Aって言うらしいんだけど、全然記憶にないんだよね」
Aという名前に心あたりはない。今世の名前なんだろうけど、Aとして過ごした時間が無いせいか、どうしてもそれを自分の名前だとは思えない。
「⋯⋯? まあいいや、それじゃ、今度は転ばないように気をつけてね! バイバイ!」
「バイバーイ」
アズリエルは大きく手を振りながら走り去って行った。前向け転ぶぞ。後ろ向いて手振りながら走れるとか器用なヤツだな。
「⋯⋯帰るか」
また倒れても誰かが助けてくれる保証はない。多分次転んだら誰にも気付かれずに死ぬんじゃないだろうか。
バタンと倒れ、そのまま身体の痛みに呻き、だんだん冷たくなって、心臓も止まり、動かなくなる自分を想像してみて、ぞっとした。
「⋯⋯まだ、まだ死にたくない」
だって転生したのにまだ何にもできていない。
「よし部屋に戻ろうそうしよう」
くるっと回れ右をして、部屋の方へ歩く。体力はかなり回復したから、急がなければ無事に着けるだろう。
あと、歩きながら気付いたことがある。
「俺何も飲んだり食べたりしてないのに喉渇かないしお腹空かないな?」
これが転生特典? 結構しょぼいな⋯⋯。もっとこう、魔法使えるとか身体能力が高いとか欲しかった。まあありがたいけど。
その後、なんとか部屋には着いたが体力がギリギリで普通に寝込んだ。
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作者名:名無し40992号 | 作成日時:2024年2月27日 20時