fj_不眠 ページ8
「え？」
「どした？フジ。」
「いやいや。ちょっと待ってよ、マコ。」
「待つけど…何？」
「なんでそんなにクマができてんの？」
「あ〜…最近忙しくて。」
「寝る時間もないぐらい動いてるの？体壊すよ？」
彼女が引っ張りだこな人なのは分かっていたが
そんなにも入れているなんて思ってもいなかった。
「大丈夫だって〜笑
よく見なきゃ分からないよ。」
そういう問題じゃないでしょ。
そう思い、スマホで彼女の写真を取った。
「ちょっと〜？笑」
絶対にそっち方面に向かいたくない
彼女の意思を感じたがここばかりは見逃せない。
「これ見ても言える？」
少しキツめに言った。
もう辞めてくれ。
自分の声に気づいて、無視しないでやってくれ。
観念したかのように彼女がため息を吐いた。
椅子に座っていた彼女は目の前の机に突っ伏した。
「いつから？」
「もう1ヶ月ぐらいかな…」
「馬っ鹿っ！」
「流石にマズイとは思って…
横にはなったりしてたんだけど、基本寝れない…
寝たとしても夢すら見れない。すぐ起きちゃう。」
「完っ全に不眠症だよ。それ。」
「だよねぇ…」
オーバーワークすることによって
自らの声を無視していたのか。
楽屋の電気を消した。
「え、そこまでしなくて大丈夫だよ。」
「明るいままじゃ体は休まらないんです〜。
はい。大人しく左手出しな。ツボ押したげるから。」
右手は枕のようにして頭を乗せ
左手はこちらへ大人しく伸びてきたので
容赦なくグリグリとツボを押す。
「…フジさ。」
「ん？」
「なんでこんなに詳しいの？」
まぁ気になるよね。
「一時期…俺もあったの。」
「そうなんだ。」
「なんだかんだ3人が助けてくれた。
話聞いてくれたり、対処法調べて教えてくれたり
ちょっと強引にでも環境を作ってくれたりね。」
「良いグループじゃん。」
「そうだね。
だから…言えない気持ちも微力ながら分かるよ。
でもね…だからこそ。」
グリグリと押していた手を止めて左手を両手で包んだ。
「俺等は所詮、伝えなきゃ伝わらない。
助けは求めないと。
マコなら大丈夫。色んな人が助けてくれる。
もしもでも、俺が助けるから大丈夫。」
君なら大丈夫。
君を助けるために
沢山の人が手を差し伸べてくれる。
「そっか…笑」
スーっと空気が抜けるように力が抜けていくのが分かった。
小さな物音を1デシベルすら立てないように
包んでいた手を外した。
おやすみ。マコ。そう心の中で伝えた。
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作者名：みこと | 作者ホームページ：http://なし)ー
作成日時：2023年10月14日 22時
