ky_発熱_#02 ページ22
彼女は車内でグッタリとしていた。
比較的家までは近いから
なんとか頑張ってくれ。
そんな願い通り街灯は高速で過ぎていく。
運転手さんにお金を払って俺が先に降りた。
もう車内で腹を決めていた。
「ん。もう限界近いでしょ。」
「ごめん。ありがと…」
彼女をおぶってマンションの
エントランスやエレベーターを過ぎ
なんとか部屋の鍵を開けて、
自分の部屋のベットへ彼女を座らせた。
クローゼットから適当に楽そうな服を選んで渡した。
「その服じゃ寝にくいでしょ。汗もかくし。」
着替えを見るわけにはいかないので一度部屋を出て
そのついでに冷蔵庫を確認しに行く。
見事なまでに何もない。これは買い出し確定だな…
部屋の前に帰ってきてドアをノックすると返事が返ってきた。
「入るよ。」
「うん、大丈夫。」
渡した服を着終わった彼女。
ブカブカのスウェットに流石に一瞬だけドキッとしたので
そんな気持ちを隠すため彼女の熱い体をベットへ押し込んだ。
「んじゃ、俺の家何もないから
とりあえず必要そうなもの買ってくる。寝てて。」
「ありがとう。キヨ。」
近くのコンビニで看病に必要そうなものを手に入れ
爆速で帰ってきて
そういえば忘れていた体温計を取り出してきて
部屋へ戻った。
彼女の顔を見ると…
「しんどいよな、頑張ったな。」
「キヨっ…。」
ポロポロと涙が溢れてきていた。
「寂しかった…」
素直に気持ちを伝えてくる彼女はあまりにも可愛い。
枕元のティッシュを取って彼女の涙を拭き
手を彼女の頬に添えた。
「寂しかったな、ごめん。これからは一緒にいるから。」
「うん。」
「とりあえず、熱はかろう。」
体温計をさしてものの数秒。電子音が鳴った。
39.8…人の体温でこんなにも高いのは初めて見た。
「…体温は知らせないでおくわ。」
「分かった…」
おでこに張りついた髪をはらって冷えピタをくっつける。
「キヨ…。」
「ん？どした？」
「ギュッてして？」
布に中心に向かって上から何かを落とされ
包み込みながら急降下したような感覚に陥る。
「うん、いいよ。」
ガラスを扱うように優しく、でもしっかりと抱きしめた。
彼女からフワッと力が抜けた。
けれどこのままを維持した。
彼女の体だけが治って、この夜がずっと続いてほしかった。
そんな願いを彼女の体が治ったら伝えよう。
そう心に決めた。
――――――
活動14周年おめでとうございます。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 15人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みこと | 作者ホームページ：http://なし)ー
作成日時：2023年10月14日 22時
