見定めた獣 ページ34
パウリーが船へ向かって叫んでいる頃、酒場では閉店の時間が近づいていた。造船を生業とするウォーターセブンでは仕事に影響が出ないように早めに酒場を閉めるのだ。店内で酔っぱらった船大工も次々に帰っていった。水浸しになった床を拭きながらブルーノは帰っていく客達を見送る。そうしている内に店内には店主のブルーノと船大工のルッチとカクだけになった。
騒ぎが無くなれば流石に酒場でも静かだ。時計の秒針の音が店内に響く。その静かさを破り入ってきたのは眼鏡をかけた美しい女性。カリファという秘書だ。
ル「遅かったな。」
カリ「途中で船大工達に話しかけられたのよ。…アグネスとパウリーが騒ぎを起こしたらしいじゃない？」
ブ「あれはパウリーが悪い。泣き虫海兵に向かってハレンチ女と言ったんだ。」
カ「またいつもの悪酔じゃ。」
カクがため息を吐き出し表情を変えた。船大工から闇の正義を背負う者へと。それはカクだけじゃない。
カ「…で。どうするんじゃ？…消すか？」
ル「泣き虫海兵を…か？」
カ「そうじゃ。今回は空気を読んだようだがルッチがここに潜入している事を知った。」
ブ「口外しない保証はない。俺も賛成だ。」
カリ「私は反対よ！」
カ「反対ってお前らしくもないぞ？」
カリ「アグネスのまだ利用価値が高いわ。」
カリファはサイファーポール9で唯一の女性だ。表側であれ裏側であれ正義の組織は男社会だ。ただ信念が強くても抗えないものもある。そんな不条理な組織の中でもカリファは生き抜き上り詰めた。だから闇の正義を振りかざす事を許された。アグネスも傷つきながらも生き抜き戦ってきた。2人の女性は全く別の道を歩み生きてきた。カリファはアグネスと自分が似ていると感じている。信念を貫き生き抜く姿は美しい。
ブ「確かにそうだが…。」
ル「泣き虫海兵は消さない。カリファの言った通りだ。利用価値が高い。」
ルッチが議論を終わらせる。最初は記憶能力が良いだけの海兵と思っていた。だからカリファが泣き虫海兵に好意的な理由も分からなかった。だが今なら分かる。世界政府の勧誘を断る度胸。脅威的な記憶能力。
曲がらない信念。酒場で見せた冷たい怒りの眼差し。
組織など関係なく手に入れたいと思わせられた。
ルッチは悪巧みをする時に悪い笑みを浮かべる癖がある。いつも以上に悪人顔で笑うルッチにブルーノはため息を吐く。獲物を見定めた獣のようだと。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 38人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
黄部屋の住人（188号室）(プロフ) - サタケさん» 返信ってこうやるんね？コメントに書き込んじゃったがな。改めてサタケ様！コメントありがとう！これからも頑張って書いてくけね！ (2019年10月26日 20時) (
レス) id: 7af9d455f8 (このIDを非表示/違反報告)
黄部屋の住人（188号室）(プロフ) - 素直にありがとうございます！ただ妄想の吐口に書いていたからコメントまで貰えると思いわんかったです。応援してくれてありがとう！作品が好きって言ってくれて嬉しいがな照れるがな。 (2019年10月26日 20時) (レス) id: 7af9d455f8 (このIDを非表示/違反報告)
サタケ(プロフ) - 初めてコメントします。貴方の作品すごく好きです！主人公の設定がもろ好みです！これからも応援したいです！ (2019年10月26日 18時) (レス) id: d959334d8a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：黄部屋の住人（188号室） | 作成日時：2019年9月18日 23時
