1-6 生活感のない部屋 ページ7
『幸村さん！ここですよ！』
足元を見ると、ミニサイズの狐が、言葉を発していた。
．．．は？
え、何？！いくら、200年くらい未来に行ったからって狐が喋るようになるのか？！
ん？もしかして、Aさんのペット？
「y…さん…！ゆ…む…さん！…幸村さん…！！早くついてきてください！
ここは広いので、迷子になってしまいますよ！」
色々と考えていたら、ボーッとしていたらしい。
狐に怒られるとは…初めての経験だ…
混乱してきたので、俺はもう、考えるのをやめた。
こんのすけさんに案内されたのは、和室の落ちついた部屋だった。
いや、寂しそうな部屋と言った方が正しいだろう。
この部屋には生活感がない。家具もほとんど置かれていない。
部屋の中にある窓から、畳に光が射し込んでいるが、
ほとんど家具のないこの部屋の寂しさを際立たせているような気がした。
「ここは、Aさんの部屋なんですよ。」
こんのすけさんはどこか寂しそうに話す。
「前は…もっと…散らかってて…掃除のしがいがある部屋だったんですけどね…」
やはり、Aさんは、昔なにかあって、変わってしまったのだろう。
「こんのすけさん、Aさんについて…知っていること、教えてくれないかな…？」
教えてはくれないだろう。と思いながらも、ダメ元で聞いてみた。
「これは、直接Aさんから聞いた方がいいと思うので、結論だけお伝えしますね。
Aさんは昔、自分の大切にしていた本丸を、
乗っ取られて…潰されてしまったんですよ。」
ガラッ
「✕✕✕✕に。」
扉が開き、Aさんが入ってきた。
こんのすけさんが言った、最後の言葉は、Aさんが扉を開けた音でかき消された。
だが俺は、突然告げられたAさんの過去に、開いた口が塞がらなかった。
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作者名：柊 蒼葉 | 作成日時：2018年3月26日 21時
