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やはりその名の通りビーチというのは海に面したリゾートホテルのようだ。車を降りると大きなBGMが外まで鳴り響いているのがわかる。
生死をかけて戦っているはずの人間がすることだろうか?
いや、生死をかけて戦っているからこそ、明日は死んでいるかもしれないから今を楽しんでいるのだろう。自分には到底理解できそうもないと昼間からチカチカと派手にひかるライトをみて目を細めた。
「バカみたい。」
心で言ったつもりが声に出ていたみたいで後ろにいたチシヤに鼻で笑われてしまった。
初めて見た今までの現実とは真逆の世界にきて驚きは隠せないがそれ以上にどうしても変、いやこの雰囲気が不気味さを増している気がする。
「まぁここも悪くは無いよ。外はあんなのだけど見ての通りどういうことかここは電気も通ってるし、お風呂にも入れる。」
「なるほどね。」
チシヤはこっちだと言うようにエレベーターに乗り込み"披露宴"と書かれたボタンを押す。
さすが高級そうなホテルなだけあって音もなく閉まり、微かな移動の感覚を全身で感じ、到着会にたどり着いた。
「先に簡単に説明しておくけどビーチにはふたつの派閥がある。カルト派と武闘派。」
「…なんかどっちも嫌だね。」
「ああ、俺もそう思うよ。」
じゃああんたはどっちなのよと口を挟もうとしたがまだ説明が終わっていないことに気づき口を閉じた。
説明を聞く限り簡単に言えば武器を持っていないメンバーは全員カルト派になるということだった。
そしてここを仕切っているのがカルト派のボーシヤという男、武闘派を束ねているのはアグニという男。
その他、このビーチという大きな集団を管理するために幹部が数人いるようだ。
私を連れてきた以上、チシヤもその1人といったところだろう。
「で、利用価値のありそうな私を連れてきたと?」
「…やれやれ、察しがいいね。」
「人は利益が無いと動かないからね。」
「じゃあ…Aは何の利益があって俺なんかに着いて行こうと思ったの?」
んーん、と顎に手を当て考えるも明確な答えは出てきそうにもなかった。
「直感?」
「ふーん、まぁいいや。」
随分と長い廊下を歩き、大きな扉の前で足を止めると何やら中から声がかすかに漏れている。
かといって何を話しているかまでは分からない。チシヤは面倒な事じゃなければいいけど、小声でつぶやき扉をあけると、新しい人スカウトしてきたよと中にいるメンバーに報告をした。
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作者名:ゆゆたま | 作成日時:2023年5月11日 2時