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1人きりになった部屋を見ると元々の観光客の物だろうか。化粧ポーチや衣類、旅行のガイドブックなどがトランクからはみ出ている。
ここに来た人達はどこに行ってしまったんだろうか。元の世界がまだあるとしたらそっちにいる人たちは私のことを覚えてくれているだろうか。なんて少しブルーな気持ちになりそうだったので久しぶりのお風呂に入ろうと思いバスルームのコックを捻った。

1人で生活していた時は薬局とかでボディシートや除菌シートを拝借して過ごしていたけど久しぶりのお風呂は本当にいい。
疲れも取れるしなんなら今すぐ寝てしまいそうだ。
寝るならベッドの上じゃないと…とうつらうつらしながらお風呂から出る準備をし始めた。

「うわ、失敬。」
「!?」

バスタオルを巻いていて良かったと心底思った。お風呂から出るとドアを丁度開けたであろうチシヤが片目でこちらを見ている。

「片目あいてんだけど。」
「んー両目では見てないよ。」
「どっちの目でもみないで。…とりあえず服着替えるから出てって。」

チシヤはくるりとわざとらしく背を向けるとご馳走様でした、と後ろ手にドアをしめた。

「やっぱ見てんじゃん。」

もう入ってこないであろうドアにぽつりと呟きクローゼットにある水着を手に取った。
与えられた水着は所謂、ビキニというやつで元いた世界ではこんなのは絶対着ないであろうものだった。
パーカーもあったので上に羽織って外で待っているであろうチシヤを呼んだ。

「安心して、部屋の中には入らないよ、Aとまだ会ってない人がいるから紹介しようと思って。」
「さっき入ってきた人が何言ってんの…。」

そんな言葉を呟いても彼には届いてないのかどこか別の場所に向かって歩き出した。


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作者名:ゆゆたま | 作成日時:2023年5月11日 2時

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