ゼロ距離まで【2】

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先生は机の引き出しから容器を取り出し中に入っている薬を何粒か手に取り口の中に放る。
コップの中の水を一気に飲み干し息をつくと横目でAを見た。

「ごめん。動いてたらやりづらいよな。」
「いえ、大丈夫です。」

水で軽く殴られたところの血を拭き取り消毒液のついたコットンで傷に触れる。痛いのかピクリと体を揺らしたが目はモニターを見つめたままだ。

【最近思うんだよね、私たち教師って生徒に何してあげられるんだろう。】

モニターの中に写る女の人が悩ましげにカメラを向ける方を見る。恐らくこれは先生が撮影しているものだろう。
ふと先生の顔をみると今まで見たことない顔をしているような気がした。

「先生の優しい顔久しぶりに見ました。」
「…そうか？そんなにいつも優しくない顔してるか？」
「はい、…少し怖いです。」

それに対して先生は何も言うことも無く動画に目を戻した。ガーゼを貼り終えるとそれを待っていたかのように電話がなる。
横目で見た画面には相楽文香とかかれていた。

「ならおにぎりを頂けますか？三十人分。十分後に第一校舎の昇降口にきてください。もちろん丸腰で。武器を所持または誰かが同行した際には教室ごと爆破します。では。」

先生と話していたのは文香という人なのだろうか。警察関係者？と疑問が沢山浮かんできたが聞くことは出来ない。聞いたって教えてくれないだろうし聞ける雰囲気でもない。
しかしサラッと教室ごと爆破するというのは聞き逃すことが出来なかった。

「あの…爆破って…。」
「本気だよ。だから教室に戻れ。」

先程の優しい先生ではなく冷たい目をした先生の瞳がAを捉える。睨まれ動けなくなった小動物のようにAは小刻みに頷くと踵を返し急いで準備室を出た。

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