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先生は肩を落とすともう一度ゆっくりみんなに問う。
「おまえらみんなAか茅野が死ねばいいと思ってんの?」
Aは震えるさくらの手をギュッと握った。もちろんAの手も震えている。死ぬのはやっぱり怖い。覚悟ができてるわけではない、でも澪奈を殺したのは自分なのだと責める。だから死ぬに値しているのはこの中の誰でもない自分しかいないと体に力が入ってしまう。
教室の中はしんと静まり返り、誰も何も言わない事で先生は大きな声で笑い始めた。
教室に反響するくらいの大きな声だ。
「何がおかしい!」
須永は苛立っていて声を荒らげる。それでも先生は笑うのを辞めない。
「お前ら揃いも揃ってクズだな!?自分が助かれば他人がどうなっても構わない。いかれてるねぇ?どうしてそんな貧しい考えが生まれるのか。モラルの欠如、アイデンティティの拡散、要は中身が空っぽなんだよ!!」
中身が空っぽ、その言葉が深く突き刺さる感覚に陥る。空っぽの中身。澪奈が酷く傷ついているのを見て見ぬふりをして接していた事。人間としてもっと成長していれば澪奈を慰めることが出来たのかもしれない。中身が空っぽだったから、なにも考えずにただ生きてきたから澪奈を受け止め、助けることが出来なかった。
「お前達はさっきのAや茅野をみて何も思わなかったのか?景山の死から目を背けてた自分を奮い立たせて向き合おうとした二人を見ても...何も思わなかったのか?過去の自分が、今の自分を作る!だから過去から逃げてるお前も、お前も、お前も、極めて幼稚なガキのまま成長が止まってるってわけだ!そんなヤツらが一体何から卒業するって言うんだよ!」
ガンッと力任せに目の前にあった机を先生が蹴り飛ばす。その音に少しだけビックリしたがさくらは下を向いて浅く息を吸ったり吐いたりしている。Aの心臓の鼓動も早いがお互い無言で手を強く握った。
「いいか、聞け!なぜ、景山澪奈は死ななければならなかったのか。これから彼女の生き様を通してお前らの考えがいかに脆く、弱いものなのか思い知らせてやる。」
先生は生徒の目を見てゆっくりと訴えかけるように言葉を紡ぐ。
その瞳からはたくさんの涙が頬を伝っていて不覚にも綺麗だと思ってしまった。
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作者名:ゆゆたま | 作成日時:2020年4月9日 1時