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──3月1日
「いってきます。」
くらい廊下に響く声はいつもと変わらず返事もない。ドアを押すと眩しいくらいの太陽が顔を照らしてきている。
3月ってこんなに暑かったっけ、なんて思う暇もなく世界は忙しいほどグルグル回って冬から春になるとか長袖から半袖になるとか知らぬ間に過ぎていく。
ただ周りが、環境がそうしているから気づかずに自分も色々な事を感じているのかもしれない。
校門につくと他の生徒達もちらほら登校している姿がみえた。
そこでああ今日は普通に登校日だったのかと気づいてしまう。
思ったよりも早くついてしまいHRまで時間もまだ少しばかり余裕がある。
教室に向かっていた足を屋上へと続く階段に向け直すと後ろから聞きなれた声が聞こえる。
どうやら自分を呼んでいるようだが無視するべきかと悩んでいたが体は反射的にその人物に向けられていた。
「見てないで手伝え、それに教室は反対側だ。どこに行くつもりだった。」
Aは何も言わずカバンを床に置くと台車の上から落ちてしまった重そうなダンボールを積み上げ直した。
「A、お前の答えは出たか?」
動かしていた手がピタリと止まり先生の顔を見る。彼もこちらを見ていたようでメガネの奥の瞳には逃がさない、というような強い光が見え隠れしていた。
「まだ...。」
「そうか、それじゃああと10日間で答えを出そうか。」
「卒業式までってこと...?」
「そうだ。よく知ってたな。」
「...バカにしないでよね。」
馬鹿にされたのが悔しくそっぽを向くと先生は思ってもないだろう謝罪の言葉と暖かな手で頭を撫でた。
「HR遅れんなよ。」
「はいはい。」
「はいは一回だろ。」
後ろ向きに手を挙げてはーいと間延びした声でAはその場をあとにした。
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作者名:ゆゆたま | 作成日時:2020年4月9日 1時