ゼロ距離まで (ページ1)

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ゼロ距離までページ1

おもむろに美術室のドアをあけ目的の人物がいる前に立つ。どうしたとも言わずまるで誰もいないかのように手を動かす。
Aは小さく息を吸うとこう言った。

「先生、私澪奈を殺した。」
「...。」

柊一颯のキャンバスに向かって動いていた手がピタリと止まった。
やっとAの存在を確かめたかのようにゆっくりと顔をあげ目を合わせる。

「誰も助けれなかった。」

そう続けるAの瞳には零れそうになるほどの涙が溜まっていて柊は筆を置く。筆を持っていた手で近くにあった椅子を寄せると目で座れと促した。

ズズっと鼻を啜り袖で涙を拭うと大きく深呼吸をして椅子に座った。

「友達だったのに...。助けてあげることが出来なかったんです...。SOSのサイン出してたのに...。」
「お前はそれでどうしたいんだ。俺にその話をしてこれからどうしたいんだ。」

「私は──。」

──3月1日

この日から10日間私達は未来を生きることにおいて大切な授業を受けることになった。
10日間、長くも短い時間で私たち生徒の価値観や考え方がぐるっと変わったのは間違いない...はずだ。