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「でもAさんもよく美術室にいたよね。」
誰かがそう言うとそれを聞いたクラスの女子達はなんで?と監視カメラを覗いた。たしかに美術部員でもないAが入り浸る理由なんてないのだ。
ああ、この今の教室の空気は嫌いな空気だ。
居なくてよかったと心底思う。
「進路相談とかしてたんじゃないのかな。」
「でもよく考えてみたらアイツに気に入られてたよな?」
「そう...かな?」
「授業中も他の生徒よりはかなり距離が近いしさっきも一度だけAじゃなくてAって呼んでたし。今も一人だけこの教室にいない。」
逢沢がフォローするように答えてくれていたが最後には黙ってしまった。カメラに目線を向けた隼人がどうなんだよと問いかけてくるが先生もAもマイクをONにしようとはしない。
Aでさえも気づかなかった事だったから答えようがなかったのだ。
「あと4時間ですね...。」
「そうだな、それなりの理由でここに連れては来たがもし何か言われた時は熱でもあることにしておきなよ。」
「...分かりました。」
時計を見ると20時まであと4時間。
まだまとまった答えはでていない。
「ロリコン変態教師。」
オレンジ色に光る準備室のモニターからは隼人が煽るようにそういっている。
先生は笑いながらモニターを見つめAを見てロリコン変態教師だってさ、とまるで他人事のように言う。
たしかにあれだけの情報が出てしまえばそこに行き着いてしまうのは分かりきっていた。
教室では澪奈と一緒によく帰っていた香帆に何か知らないかと聞いていたが、華がすかさず澪奈と仲良かったのはさくらではないかと言う。
そう、誰よりも澪奈を知っていて仲の良かった友達はさくらだ。
華はAも仲良かったけど今はいないから聞けないねと困ったように言うもんだから先生を見るとまだ帰るのはダメだと言うように首を横に振った。
モニターにまた目をやると香帆はさくらも澪奈とそこまで仲良くなかったと言われてしまい、元々言い返す事が下手なさくらは何も言えず黙ってしまった。
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作者名:ゆゆたま | 作成日時:2020年4月9日 1時