未練 ページ15
「ふむ、信じるでも信じないでもなく信じたくない、か」
日誌に視線をやりながらあと何書こうかなぁとか考えている私を他所に杏寿郎は何やら考え込んでいる。
…実は私、皆が記憶持ったまま転生してきたこと怒ってるんだからね。
それが理由というわけでもないが、とりあえず記憶のないふりは徹底する。
「桜之は今、なにか辛いことでもあるのか?あるなら言ってみろ!俺が解決してやろう!」
「そうですね、思い過ごしかもしれませんが何故だか先生方によく呼び出されてこき使われるんですけどそれがちょっと辛いですね」
「……………よもや!」
よもやじゃないよ解決してないじゃんしようともしてないじゃんよもやでなんでも誤魔化せると思うなよ。
「先生は辛いこととか、辛かったこととかないんです?」
前世の杏寿郎は見た限りだとあまり色が揺らがない人物の一人だった。まぁ、その代わりすべて言葉にするからまず色を見る必要すらなかったんだけど。
「…あるぞ。辛かったことと、未練がな」
「未練って。煉獄先生まだ生きてるじゃないですか」
「うむ。だが、未練なのだ」
「…何がですかって聞いていいんですか、これ」
「…前世の話なんだが」
「…はぁ」
「同じ柱…今で言うところの同僚が、俺の預かり知らぬ間に死んでしまってな」
思いっきり柱って言ったよこの子。しかも私の話ですか?私、記憶あるからこんな普通に聞いてるけどなかったらめちゃくちゃ重い話に白目剥いてるよきっと。
「あまり会う機会もなく、だが会えばいつも杏寿郎、と優しい声で呼んで笑ってくれるような少女だった。俺より年下だったが姉を自称していて…けれど確かにどこか貫禄があった」
まぁ何度も人生コンテニューしてるからね。精神年齢はえぐいからね。
「…思えば、桜之が刀を抜いたのを見たのは、助けて貰ったあの時限りだったな」
今桜之って言った。桜之って言った!
あのね、気が付かないふりするのも限度があるの。もう少し濁そう!?
「けれど俺は結局、一度たりとも虹の呼吸を見たことはなかった。…それが未練。それがとても辛い…今もな」
あのね杏寿郎、虹の呼吸って一般生徒が聞いたところで「は?なにそれ」ってなるやつだからね。私は柔軟に「知らない言葉出てきたけどきっと歴史の授業で今後出てくるんだろうなぁ」って脳内お花畑にできるけど!だからちょっとは濁してお願い!!
心做しか落ち込む杏寿郎にかける言葉が見つからず暫く教室には沈黙が流れたのだった。
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とうみん(プロフ) - バレてしまう時を楽しみに待っていた私がいた。これからの展開に胸を躍らせる私がいる。あ、この作品好き。 (2020年12月21日 16時) (レス) id: 3cb4113b8b (このIDを非表示/違反報告)
三隣亡 - とても面白いです!!これからも頑張ってください!続きを楽しみにしてます! (2020年12月19日 19時) (レス) id: 9280cade43 (このIDを非表示/違反報告)
毬莉 - 好きです!もう最高!過保護な彼らが可愛くて仕方がないです!更新頑張ってください! (2020年12月13日 0時) (レス) id: 6812348321 (このIDを非表示/違反報告)
実弥 - 更新ファイト! (2020年12月12日 18時) (レス) id: b8ee803632 (このIDを非表示/違反報告)
ゆな - 一気に読みました!とても面白い内容で感動しました。次も楽しみにしてます。 (2020年12月10日 21時) (レス) id: 0492b38da7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜もっち | 作成日時:2020年11月27日 8時