口が滑って ページ12
次の日。
「………」
「………」
私は今、体育館で正座をしています。
目の前には無言で竹刀を持ち、仁王立ちしている義勇。
……なにこれ、なんでこんなことになってるの?
事の発端は例の怪我。
今時包帯ぐるぐる巻きの怪我なんて早々ないらしい。
へぇ、平和になったもんだ。呑気に思った。
思っていたが、今思う。
いや、全然平和じゃないよ、主に私の境遇。
だって、校内放送で名指しで呼び出しくらって、呼び出し先体育館だし、なんなら私、昨日も鬼狩りで怪我増えてるからできるだけ動きたくないのに、というか足怪我してるから正座なんて拷問なのに。
「桜之」
「ハイ」
「何故呼び出されたか、わかるか」
「イイエ」
怪我の理由なら昨日説明したはず。蘭と考えた偽りの理由だが。
というか昨日も思ったけど義勇はとりあえず竹刀を置こうよ。刀ないと落ち着かないのかな。背後に立ったら斬られるあれかな。
鬼はまだいるけどお姉ちゃん珍しく未だに頑張ってるから、義勇はもう普通に刀なんて手放して平和に生きててくれればいいんだよ。
「…怪我」
ポツリと呟いた義勇がスっと近づいてきて首の包帯に触れる。
少し大袈裟だが大した傷ではない…と思う。ちょっとざっくりやられただけで。ガーゼだけだと隠しきれないだけで。
「…冨岡先生?」
「…痛く、ないか」
包帯越しに感じた義勇の指先は冷たく感じた。
微かに震えている。
どうして?
そこまで考えて、思い出した。
──あ、私、百年前の死亡偽装で首切断したんだ。
あぁ、そっか、思い出しちゃったのかな。もしかして、トラウマになってたりするのかな。悪いことしたな、と今更ながらに思う。
昨日追いかけてきたかつての弟妹達も同じ気持ちだったのだろうか。
「…怯えた子猫に引っ掻かれただけですよ。それなのに緑川先生が大袈裟に包帯なんて巻くから酷く見えるだけで───」
「桜之」
「はい?」
「何故そこで、緑川が出てくる」
「えっ、だって」
だって、義兄妹だから、一緒に暮らしてるから、治療してくれたの。…と喉元まで出てきたが飲み込んだ。
そうだ。これ秘密なんだった。
義勇の色が不審と…なにこの形…嫉妬?なんで嫉妬してるの?
ちょっとよくわからないけれども、やばいことだけは分かる。どうにかせねば。
「……緑川先生、医師免許持ってるらしかったので」
ごめん、蘭。医師免許取ってきて。
応援してます。
こうして何とか誤魔化せた…と思う。
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とうみん(プロフ) - バレてしまう時を楽しみに待っていた私がいた。これからの展開に胸を躍らせる私がいる。あ、この作品好き。 (2020年12月21日 16時) (レス) id: 3cb4113b8b (このIDを非表示/違反報告)
三隣亡 - とても面白いです!!これからも頑張ってください!続きを楽しみにしてます! (2020年12月19日 19時) (レス) id: 9280cade43 (このIDを非表示/違反報告)
毬莉 - 好きです!もう最高!過保護な彼らが可愛くて仕方がないです!更新頑張ってください! (2020年12月13日 0時) (レス) id: 6812348321 (このIDを非表示/違反報告)
実弥 - 更新ファイト! (2020年12月12日 18時) (レス) id: b8ee803632 (このIDを非表示/違反報告)
ゆな - 一気に読みました!とても面白い内容で感動しました。次も楽しみにしてます。 (2020年12月10日 21時) (レス) id: 0492b38da7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜もっち | 作成日時:2020年11月27日 8時