独白 弍 ページ9
その日、真っ黒な隊服を支給されて、鳩と共に下山した。
……正直に言えばわけわからぬ。
あの女の子達にそれはまぁ丁寧に説明してもらったけれど。鬼の存在はこの目で見たから疑ってないけども。
「…で、わたしはきさつたい?に入っちゃったの?」
まぁ、そうなんだろう。うん。うん……
「……………」
思考が停止してしまったのは、許して欲しい。
そしてその状態のまま隊服をとりあえず一回洗おうと心ここに在らずのまま洗剤と間違えて漂白剤突っ込んで隊服が真っ白になったのは、不可抗力だ。
はぁ、とため息をつきながらある部屋へ向かう。
私たちの家。私の唯一の家族。その彼が眠ってる部屋に。
部屋の中に入ると彼はまだ眠っているらしく規則正しい寝息が聞こえてきてやっと現実味が帰ってきた気がした。
「……遥。」
ポツリと呟いた最愛の弟の名は空気に溶けて、消えた。
***
眠り続ける遥。
それは一年前からだった。私は四つ。遥は二つ。
唐突に目覚めなくなってしまった。
…けれど医者に見せずとも理由はわかる。
「…ねぇ遥。お姉様ね、鬼を殺さなきゃいけなくなっちゃったの。」
「……。」
「…お家、留守にすること増えるとおもうけど、蘭がいるから、へいきよね。」
本当は、平気じゃないのは私なのに。
「……できるだけ帰ってくるから。」
平気じゃないくせに、鬼殺隊を拒まなかったのは。
眠り続ける遥をずっと見続けるのが、辛かったからかもしれない。
「…もうすぐ、刀、届くんだって。刀なんて使ったことないけど、へいきかなぁ。」
常に重い番傘を振り回して遊んでいたので腕力はなんとかなっているかもしれないが。
…少し努力が必要みたい。
「遥。……だいすきよ。…早く、おきてね」
──5歳の頃の記憶。
今でも覚えていられる記憶力が最近少し妬ましい。
「……輝哉ぁ……柱引退させてよう…」
「……」
「…困った顔するのずるい」
私は、何故、鬼殺隊に、いるのだろう。
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三隣亡 - とても面白いです!!これからも頑張ってください!続きを楽しみにしてます! (2020年11月24日 16時) (レス) id: 94f806d9d0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜もっち | 作成日時:2020年11月18日 20時