その表情は ページ6
「ねぇしのぶ……お姉ちゃんちょっとおかしいかもしれない」
「なにがです?」
「頭」
「あぁ…」
「えっ、納得しちゃうの?」
夜、突如蝶屋敷の庭に現れた虹柱。
相変わらず番傘を差しているせいで顔に影が差しており表情を伺うことは出来なかったが、開口一番に発した言葉のおかげか、しのぶは特に警戒をしなかった。
「突然現れて、一体なんの用かと思えば…」
「なんの用ならよかった?」
「怪我してきたりとか…」
「…怪我して欲しかったの?え、なんかおかしくない?普通『怪我がなくてよかった、お姉ちゃん』的なこと「言いません。」
被せ気味に否定されその後の言葉が紡げなくなった虹柱をちらりと見る。
(…本当、怪我してるところ一度も見たことないんですよね…)
本来怪我はしない方がいいに決まっているが虹柱に至っては今まで一度も、かすり傷すら見たことがない。(…いや、かすり傷如きで訪ねられても困りますが。)
他の柱達は少なからず怪我をしているのに、この柱だけは一度も───
「お姉ちゃんが怪我してるところ見てみたい?」
唐突にそう問いかけられたしのぶは思わず笑みを崩す。虹柱の言葉は単なる戯れ言だったのかもしれない。けれど、一瞬心を読まれたような気がしてしのぶは押し黙った。
「あはは、沈黙は肯定じゃない?お姉ちゃんちょっと傷ついたよう、心が」
心の傷、治して?なんておどけて言うものだから、治してほしいのはこっちだとしのぶは思った。
そんなもの治せるのなら、
「治せるのなら苦労しない?」
──今度こそ、何も言えなくなったしのぶを見て、表情の見えない虹柱は尚も明るく言葉を紡ぐ。
「しのぶって案外わかりやすいから、お姉ちゃん心配だなぁ」
「……なにが、ですか。」
「…いろいろ。」
思わず硬くなった声音で尋ねたしのぶに虹柱は内緒とでもいうかのごとく口元に人差し指を当て、笑った。
***
「昨夜からしのぶ様がピキピキなさってますよぅ…」
「また戸棚のおまんじゅうが減ってたのかな…」
「カナヲ様何か知ってますか…?」
「…?」
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三隣亡 - とても面白いです!!これからも頑張ってください!続きを楽しみにしてます! (2020年11月24日 16時) (レス) id: 94f806d9d0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜もっち | 作成日時:2020年11月18日 20時