独白 参 ページ31
虹柱、桜之 A。
彼女は五歳で鬼殺隊に入隊し、刀が届いた約三日後。───下限の弍と、遭遇した。
勿論のこと、同期もいなければ育手もいない少女に、その鬼の瞳に刻まれた文字の意味がわかるはずもなく。
加えて言えば、興味もなかったが。
ただただ珍しいもの好きだったらしいその十二鬼月に狙われた。
引く力が強いと言われればその通りかもしれないが、この時の少女からしてみたら運が悪いとしか言いようがない。
そして、その鬼も運がなかったとしか言いようがない。
よく分からない組織によく分からないまま入隊し、よく分からないまま刀を渡されよく分からないまま司令が来た少女の機嫌はすこぶる悪かった。
そりゃぁもう能面並みの表情を常に浮かべるくらいには。
呼吸なんて知らない。知っているのはこの渡された刀で頸を跳ねることが今の自分の仕事になってしまったことだけ。
小さな身体に合わせてある、普通の刀よりも短い刀。
下限の弍が、少女相手に油断していたこともあるだろう。
番傘に刀が仕込んであるなんて思わなかったことも。
そして、少女が“武器を握るのが初めてじゃない”なんて、知るはずもなく。
気づいた時にはもう、鬼の頭部は地面に転がっていた。
***
「しろがね、なぁに、このてがみ。」
それから数日後、幼い鳩がせっせと手紙を運んできた。文通相手に心当たりなどない少女は首を傾げる。
くるっくー、と鳴きながらぐいぐい手紙を押し付けてくるものだから思わず受け取ったが、なんだか嫌な予感がして読みたくなかった。
ので、破り捨てたのである。良くも悪くも、マイペースな少女だった。現在もそれは変わらないが。
その数日後。
次は鳩が変な装束を着た人を連れてきた。
「お館様からのお呼び出しです。」
オヤカタサマ。誰それ。
ほへ、としていると軽々抱き抱えられ、連行された。これは正しく誘拐というのでは?と思ったが、特に抵抗はしなかった。もう色々とめんどくさかった。
そして連れていかれた先で待っていたのは、五つ年上の、少女と同じくまだ少年とも呼べる男の子。
向かい合って正座してると、少年が口を開いた。
「初めましてだね、A。私は産屋敷 輝哉。
こんなふうに呼び出してしまってすまない。実はAに頼み事があるんだ」
「…?」
「柱に、ならないかい?」
「…ムキブツになれと?」
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三隣亡 - とても面白いです!!これからも頑張ってください!続きを楽しみにしてます! (2020年11月24日 16時) (レス) id: 94f806d9d0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜もっち | 作成日時:2020年11月18日 20時