貴方と刻む記憶を Ⅱ (ページ9)

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記憶 53 ページ9

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健太side

無意識に、俯いたままの彼女を抱き締めていた。

骨が折れちゃうんじゃないかってくらい、強く。

「大丈夫…っ、大丈夫だから、！」

"大丈夫"何度そう言っても彼女はけんたの腕の中で首を横に振るだけで。

それだけで、胸が痛かった

『………もう誰にも迷惑掛けたくない。仕事も、もう続けられない。家事だって、色んなこと忘れちゃう』

「大丈夫だから。けんたも家事手伝うし、仕事頑張る」

『分からなくなることが多すぎて、沢山怒らせるよ。健太は、私といない方が良いの。私なんか、人と関わっちゃ駄目なの、ッ』

「馬鹿、そんな事二度と言わないで」

『っ、だって、もう』

「"死ぬだけだから"でしょ？どうせ。」

『………』

「……けんたがAに告白した時、何て言ったか覚えてる？」

『……………ごめん、』

「…"けんたの時間を、Aと共有したい"って言ったの。」

「Aは、Aの時間、けんたと一緒に過ごすの、嫌？」

『っそんな訳ない、！』

「じゃあずっと一緒に居ようよ。迷惑掛かるとか思ってるんだろうけど、けんたはね、今こうやって一緒に居れて凄い幸せだよ。世界一幸せ者だよ」

『～～っ！……もう、どしたらいいか、分かんない、よっ』

「だいじょーぶ。けんたが傍にいるから。傍にいる限り、安心していいから」

「けんたはAの意見を尊重するよ？…治療したくない！って決めたんなら、今よりもっっとAと仲良くなって、喧嘩したりして、デートもして、毎日幸せだなあって思わせるよ」

耳元でそう伝えると同時に泣き出したA

今まで聞いた事無いくらい大声で泣いていて。

その間もずっと抱き締め続けた。

1時間もすれば泣き声も小さくなって、聞こえてきたのは規則正しい寝息。

彼女は、Aは、こんなに弱くなってしまった。