貴方と刻む記憶を Ⅱ (ページ5)

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記憶 49 ページ5

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Aside

見覚えのある部屋に、今度は看護師さんも含めて先生と話す。

先生「＿＿ここ数日で困ったことはありましたか？」

『いえ、全然。』

先生「何か、忘れることは」

『……部屋の整理をしてた時、これは何の為に使うんだったっけ、とか、あと、最近ドアの開け閉めとか、逆方向に引いちゃう事とかあります、けど、』

先生「…そうですか。」

『＿＿＿…あの、先生』

先生「？」

『…治療、受けないと駄目ですか？』

先生「！…どういう事ですか？」

『どうせ、治らないんですよね？薬はただ進行を遅らすだけであって、記憶は普通に消えていくんですよね？』

先生「……」

『なら、今更どうもがいたって無駄だと思うんです。それなら、私は限られた時間で、大切な人と過ごしたい。』

先生「ですが、！っ」

『次診察がある時、彼も一緒に連れて、ちゃんと自分の答えを伝えます。今は、まだ、頭が追いつきません。』

先生「進行が早いのはご存知ですよね、？」

『分かってます。明後日、必ずまたここに来ます。だから、明日、普通の生活をして、今の私の限界を知りたいんです。』

先生「…………分かりました。ちなみにお仕事の方は」

『…かなり覚える作業の多い仕事なので、辞めようかな、って思ってます。』

先生「…そうですか。………"彼"は以前一緒に来た神谷さん？ですか？」

『はい』

先生「＿ゆっくり話し合ってください」

帰路を忘れないように、目印になる様なものを書き込んだメモアプリを開きながら帰る。

＿＿＿いつも行ってたあそこの花屋さん、店長さんの名前、なんだったっけ

＿＿＿そういえば前店に届いてた荷物、誰宛だったっけ

＿＿＿……健太が所属しているグループの、名前は…

朝、あんなに覚えてると思ってたのに。

『＿＿＿＿ははっ、、私、沢山忘れてるじゃん』

口から出たその言葉は不意に吹いた風と共に消えた。